5部

□伝わらない気持ち
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「なぁななしいいだろ?」

『何が?』

「本当はわかってるくせに、わざわざオレに言わせたいのか?」

『ちょっと離れなさいって!!またプロシュートに怒られるから。』

「今日はラッキーなことに、アジトには誰もいないんだ。…つまりオレとななしの二人きりだ。」



正直まずいと思った。
メローネと私は付き合ってはいるものの、メローネはところ迷わず発情する。

今回みたいに昼からしかもリビングで発情されると、私はいつもうまいこと時間を稼いで、プロシュートやリゾットが来て止めてくれるのを待っていた。
でも今日はそうはいかないみたいだ。



『ねぇ!怒るよ。』

「そう…。」

『離れてって!!』

「ななし……。」

『ありえないッ!聞いてんのッ!?』

「オレさぁ……、」

『メローネッ!!』

「君の怒ってる顔が一番そそるんだ……。」




―――――ドガッ!!!

ついに私はメローネを蹴りあげてしまった。結構本気で。

なのにメローネはお腹を抑えて笑いながら「その蹴りもディーモールト・ベネ…ッ!」とか言いながら、まだ懲りずに迫ってくる。


さすがに恐怖を感じた私は急いで玄関に走ってアジトを出ようとするが、玄関についた所でメローネに捕まってしまった。

手首を壁に押し付けられると、私の顔は引きつった。
メローネはその様子を見て笑いながら

「怯えてるななしも素敵だよ。もしかして誘ってるの?」



首を何回もふって否定するけど、メローネは私の髪を軽く握って顔を近付けてくる。
もう逃げられないと思った私は咄嗟に目をつぶった。






「おいお前ら、リビングで懲りずに次は玄関でかよ。」

その声にメローネも私も驚いて、扉に目を向けるとプロシュートがちょうど帰ってきていた。


「まったく、メローネは何回言っても無駄だな。」

「えっ?プロシュート任務は?」

「早く終わったから、もう帰ってきた。お楽しみの所悪かったな。」

そう言って、私の方をニヤニヤしながら見てくる。

「本当だよーッ!!タイミング悪すぎ!!」

メローネはそう言うけど、私は助かったと心からプロシュートに感謝した。







「なぁリゾット、先月赤字だったぞ。」

「そうか…。ついに赤字か。」

『リーダー、正式にボスに給料上げてもらうように頼んでよ!!』
「いや、まだ切り詰められる。
今日はスーパーで卵が大安売りしていたから、買いだめするんだ。そして今日から卵で乗り切ろう。」

「リゾットお前案外チラシとかチェックしてんだな。」

『リーダーってば主夫だね。』


リーダーとプロシュートとななしが家計簿を囲んで、笑いあってる。

オレらの生活がヤバイらしいけど、オレにはそんなの関係ない。

オレはななしの怯えた顔と怒った顔が大好きだけど、やっぱり笑ってるななしが一番可愛いと思うんだ。
でもオレの前では滅多に笑ってくれない。笑うのはいつも、リーダーやプロシュートの前。


そのことをプロシュートに言ったら「お前の愛が重すぎんだよ。」って言われた。
でもオレはそれくらいななしを愛してるんだ。

笑顔をオレ以外に見せたくないっていうのは、たぶん独占欲ってやつだと思う。




「なぁななし、オレの前で笑ってくれないか?」

『は?なに言ってんの!?』

オレが近寄って話し掛けた瞬間ななしの顔は不機嫌なものに変わってしまった。


「だからオレの前だけで笑ってて。他の奴に見せちゃダメ。」

『そんなの無理に決まってるじゃん。』

「もっとななしを独占したいんだよ。」

『メローネ、あんた重すぎるよ…。』

「でもオレはそれくらいななしのこと……!!」

『ちょっと距離置かせてくれない?』



そう言って自分の部屋に行ってしまうななし。

ねぇなんでこんなに愛してるのに、オレの愛は伝わらないの?





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