「なぁー、ななしって何歳なんだァ?」
突然ナランチャがこんなことを聞いてきた。私は勉強を遮ってまで何を言いだすんだ、とナランチャを目を細めて見た。
そんなナランチャの横で新聞を読むブチャラティも、この発言に驚いたらしくこちらを見ていた。
『…そんなこと聞いてどうするんですか?』
「なんかよォ、ななしって顔は俺くらいの年に見えるけどよ、雰囲気は大人っぽいからどっちかなァって!」
「ナランチャ、女性にそんなことを聞くなんて失礼だ。日本人は若く見えるから、実際は思ったより年いってることもあるんだぞ!!」
『おっ、おい…!』
「でも気になるモンは気になるだろ!」
「そうは言ってもな…。」
『私は別に言ってもいいですよ。ナランチャよりも年上で、20歳です。』
「そうか!じゃあミスタと同い年なんだな!」
マンガの中ではたしかミスタは18歳だったはず。だとすると、この世界は原作から2年経った世界なんだ。じゃあブチャラティは22歳か。
「ほぉ、俺くらいとは思っていたが20歳だったのか。」
『あら、もっと若い子が好みでしたか?』
「いや、俺はガキには興味ないな、2歳差くらいが丁度いい。」
少しブチャラティをからかってみたけど、またうまく交わされて逆に私が赤くなってしまった。やはりブチャラティの方が一枚上手だった。
「ななしは、じゃあ俺よりお姉さんだな!」
ナランチャはそう言ってドリルを机に投げながら、私の膝の上に頭をのせてきた。
ちょっと!!と慌てる私を余所に、ナランチャはちょっとくらい休憩したっていいじゃねぇか、と目を閉じる。
私は助けを求めようとナランチャの向こうに座るブチャラティをチラッと見ると、笑いながら好きにさせてやれ、と言ってきた。
そして新聞をまた読み始めるブチャラティの邪魔をしてはいけないと、ナランチャに抵抗するのを止めてそれを渋々受け入れた。
ナランチャをまじまじと見るのは初めてで、男なのに女の私よりも華奢な彼が羨ましくなった。
『ナランチャと私の体を足して2で割ったら丁度いいと思う。』
心の声が思わず声に出ていたらしい。ブチャラティは顔を上げて、不思議そうな目線を私に送っていた。その視線に居たたまれなくなった私は、弁解するようにナランチャの細さについて話した。
「そんなことか。」
『こっちとしては大問題なんです!』
「お前がこんなに細かったら抱き心地が悪いだろう。」
『なっ…!!』
「でもナランチャにはもっと筋肉をつけてもらわないとなぁ!」
そう言って1人でケタケタ笑うブチャラティの横で、またもや私は心臓をドキドキさせていた。
人の一生分の心拍数は決まっているらしい。ブチャラティと一緒にいると、ドキドキしすぎて私の寿命は確実に短くなっているに違いない。
これに慣れろと言うほうが無理だと思う。
その後はお互いに話しかけることもなく、静かな時間が過ぎていった。
私は太ももの上でナランチャ寝ているので動くことも出来ず、何となくナランチャの髪をいじっていた。細くて柔らかかった、女の子みたい。
そんなオヤジみたいなことを考えていると、ミスタとジョルノと1人の女の子の声が廊下から聞こえてきた。
.