ジャイロは髪が長い。
ヴァルキリーに乗った時になびくその長い髪は、見とれるくらいに綺麗。
女の自分よりも少し長いそれは、馬に乗っていれば砂や潮で痛んでいてもいいくらいなのに。
だから私はジャイロの髪を触るのがすごく好きで、今も髪をポニーテールに束ねて遊んでいる。
「ヴァルキリーの尻尾みたいだな。」
ジャイロが自分の髪を触りながら笑った。
高めに結われた髪はジャイロが動くたびにゆらゆら揺れて、そのたびに、ジャイロの普段は髪で隠れているうなじが見えている。
私がそのうなじに唇を近付けてキスをすれば、いきなりのことで驚いたのか、ジャイロは「おいおいおいおい」と私の方を振り返った。
「どうかしちゃったのか?名無しちゃんよぉ。」
『ジャイロの髪が綺麗でうらやましい…。』
「オレはおまえの髪の方が好きだけどな。」
『ううん、ジャイロのが長いしサラサラだよ。ほら、こんなに…。』
そう言ってまた髪に手を伸ばそうとすると、その手をジャイロに掴まれた。
「オレ、なんかおまえに髪触られるとヘンな気分なるの、知ってた?」
ジャイロは掴んだ手を強く自分の方に引っ張ると、その勢いのまま私にキスをしてきた。
キスがだんだんと深くなると、ジャイロが私の髪を握り掴んで後頭部を固定した。
私もやられっぱなしじゃ悔しいから、ジャイロの一束にまとまった髪を掴んでやる。
倒れこんでますます縮まった2人の距離は、その行為をますます加速させる。
ジャイロが名無しの服の中に手をいれると、名無しはそれを制止した。
『ちょっとまだ真っ昼間なんだけど。』
「オレをソの気にさせたのおたくだからね、責任とってね。」
『ちょっ…、んっ……!』
その間もジャイロは私の髪を指で弄んでいた。
だからかな、私もそういう雰囲気に流されたのは。
結局最後までジャイロのペースにのまれたまま、事を終えた。
私がジャイロの隣でぐったりして寝ていると「やっべ!!」という声がして目を覚ました。
『…ジャイロ、どうかしたの?』
「午後に診察が入ってたんだった!!父上に怒られるッ!!」
焦りながら着替えるジャイロを、寝呆け眼で見つめていると、準備が整ったらしく、ジャイロはいってきますと言って部屋を出ていこうとした。
私はいってらっしゃいと言った瞬間、ジャイロのポニーテールを引っ張って顔を近付けさせると、チュッと軽くキスをした。
『頑張ってねのオプション付き。』
するとジャイロは顔を真っ赤にして手で口を押さえながら、「夜も覚悟しとけよ」と言って病院に向かっていった。
窓から見える、走るとなびくジャイロの髪がまた恋しくなった。
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