「おたくかわいいってよく言われない?……えっ、そいつらに見る目がないだけだって!!」
また患者の子に手、出してる。
昨日家にこいって呼び出したのどこのどいつよ。
私が怪訝な目で見ていてもまったく気がつかずに、根気強く女の子を口説き続けるジャイロ。
ようやく諦めたのかジャイロは女の子にまたねと別れを告げ、私を見た瞬間あからさまに顔を青くした。
「よっよう。来てたのかッ…。!」
『呼んだのそっちでしょうが。』
「いやっさっきのはさぁ、仕事上の付き合いっていうか…。」
『明らかにジャイロが誘ってたように見えたけど。』
「……ニョ、ニョホッ。」
はぁと私がため息をついていると、丁度その時ジャイロのお父さんから「今日はもうあがっていいぞ。」と声をかけられたので、じゃあ俺の部屋で…とジャイロに部屋へと誘導された。
といってもツェペリ家には幼い頃から行き慣れているんだけれども。
私が部屋に入ったのを確認すると、ジャイロは部屋のドアを後ろ手で閉めた。
先ほどまでの飄々とした表情から一転、持ち上げた顔は真剣そのものだった。
「なぁおまえさん、結婚するって本当か?」
そう言われた時、驚きのあまり言葉を失った。ジャイロだけには知られたくなかったから。
「…誰から聞いたの?」
『そのおまえさんの結婚相手って奴が言いふらしてたぜ。ずっと名無しのことが好きだったらしく、みんなに自慢してたぜ。』
私の家は父親が早くに死んで、母親が女手一つで私を育ててくれた。
そんな母が大好きだったけど、今までの無理がたたったのか、最近になって母も私を置いて死んでしまった。
身寄りのなくなって途方に暮れていた私の前に現われたのが、この町で一番の地主だった。
しかし養ってくれるかわりに、その息子と結婚することがその条件だった。
その息子の歳は私ともジャイロとも同い年で、あんまり印象はなかったけど一応小中高校も一緒だった……らしい。
『……だったら何よ。』
「おまえ正気か?」
.