4部

□カレではなく彼が
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───ピンポーン

来訪者を告げるチャイム音がして、夕食を食べていた箸を止める。

おい誰だよこんな時間に、という声を無視してななしがスリッパをパタパタさせながら玄関へ向かうと、そこには仗助の姿があった。


『どうしたの?こんな時間に。』

「実はよォ、おふくろが今日遅くなるって忘れてて家の鍵がなくて家はいれねぇんだ。」

『あー、災難だね。』

「ってわけで、少しの間だけ家にいさせてくれねぇか?今月金欠でどこにも行けねぇんだよォ!」

『別にいいけど。じゃあご飯食べてく?お腹減ったでしょ。』

「グレートだぜッ!」


そう言ってななしが仗助をリビングに通そうとした時、仗助のげッ!という声がした。その仗助の目線を辿ると、さっきまで一緒に夕食を食べていた露伴が顔をしかめてこちらを見ていた。
ななしは露伴と仗助が仲が悪いことは百も承知だっただけに、これはヤバイと冷や汗を流す。しかし、仗助を家に置いておくと言ってしまった手前、家から追い出すわけにもいかなかった。


『あ、露伴。仗助も一緒にご飯食べてもいい?と言っても露伴に拒否権はないけど。』

「何で俺が仗助なんかとッ!」

『この家の主は私です。嫌なら露伴が出てけばいいでしょ。』

「………チッ!」


露伴は全員に聞こえるくらい大きな舌打ちをしたものの、それ以上は何も言わなかった。その様子を仗助はニタニタしながら、露伴先生も大人げないっすねェ、と笑って見ていた。
そして仗助は、そこが自分の家であるかのように慣れた足取りで真っ直ぐ夕飯の待つリビングへ向かっていく。その後を追うようにして、ななしがリビングへ行こうと露伴とすれ違った瞬間、腕を勢いよく引かれて足が止まった。

「なぁ、仗助って君の家によく来るのか?」

『よく一緒にゲームしたりするくらいだけど。』

「あんまり迂闊に男を家に入れるんじゃあない!」

『仗助とはそんなんじゃないから。』

「ホント君って奴は……ッ!」

ななしはいいから離してよ!と露伴の腕を振りほどくと、とっくに冷めてしまったであろう鍋のシチューを温め直した。



育ち盛り、食べ盛りの仗助はななしの作ったシチューを次から次へと口に運んでいく。その食べている様子は見ているこっちが気持ちよくなる程のテンポの良さで、ななしは頬杖をつきながら、そんな仗助を微笑ましく見つめていた。

一方その横では、なぜか露伴が勝手にななしの冷蔵庫からビールやらワインやらをかき集め、1人でただひたすら浴びるように飲んでいた。
最初は飲み過ぎるのは良くない、とななしも露伴を止めていたが、酒ッ!飲まずにはいられないッ!とかなんとか言いながら露伴はそれでも酒を飲むのをやめようとはしなかったのだ。



ようやく満腹になった仗助とななしが談笑を始めていると、先程までは1人でそっぽを見ながら酒を飲んでいた露伴が、頬を赤く染めながらフラフラとした足取りでこちらに来ようとしていた。その危なっかしい態度に見ていられなくなったななしは、イスから立ち上がって露伴に肩を貸す。

すると露伴は急にななしの首に腕を回して「おい!クソッタレ仗助!こいつは俺のモンだッ!見てろよ!」と大声で叫んだかと思うと、噛み付くようなキスをしてきた。
あまりに突然のことで、ななしは思わずバランスを崩して、露伴の体重がかかっている方向に倒れてしまった。

それと同時に、首に回した腕はそのまま、露伴はななしに馬乗りになってさらにキスを深いものへとしていく。
後ろに肘をついて姿勢を保っていたななしもついに耐えきれなくなり、頭が床に当たってしまう。しかし露伴には一向にやめる気配はなかった。

『ちょっとッ……仗助見てる…って!』

「見せ付けてんだよ。」

『……んッ。』

ななしは抵抗はするものの、露伴の酒の匂いに自分も一緒に酔ってしまいそうになり、ぼうっとした脳にはやけに2人の唇の音が響く。


ようやく解放されたかと思うと、露伴はななしに跨りながら満足そうな顔で「…なんだ仗助まだいたのか。空気読んで早く帰れよ、まぁ続きが見たいってなら話は別だがな。」と言ってにやりと口角を上げた。
すると仗助は冷や汗をかきながら、お邪魔虫は退散するっスよォ、と言いながら走って家を出ていってしまった。

リビングにはごちそうさまでした!という仗助の声と、ドアの閉まる音が響いた。


茫然と仗助を目で追っていたななしが、真正面にいる露伴に目線を戻すと、露伴は至極嬉しそうに笑っていた。




「さぁ、お仕置きの時間だよ。ベイビー。」




 

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