「おいッ!起きろ、着いたぞ。」
露伴にペチペチと頬を叩かれてななしが目を覚ましたのは、自分の部屋ではなくて露伴の部屋だった。
『あ…、寝ちゃっててごめんね。すぐ帰るからさ。』
「待てよ。ソファに座ってろ。」
そう言って露伴はキッチンへ向かったと思うと、濡れたタオルを2枚持ってきた。
一枚は「これで目を冷やせ。」と言ってななしに渡し、もう一枚で露伴自らしゃがみこんでななしの足を拭きだした。
『ちょっとッ!!汚いからいいって!』
「その汚い足でうちをうろつかれても困るんだよ。」
『あぁそっか、ごめん…。』
「別に謝らなくたっていい。」
そう言って露伴は手をやめることなく、沈黙の時間が過ぎていた。
「それで、お前はなんで泣いてたんだ?」
沈黙を破ったのは露伴だった。
それにななしは苦笑いをして答えた。
『あー、私振られちゃったの!二股かけられてたみたい!』
「そうだったのか……。」
『いやもう気にしてないよ。……でも本気であいつのこと好きだった………。』
「……。」
そう言ったっきり顔を上げないななし。
すると露伴はいきなりななしの手を取って、
「ぼくはお前がずっと好きだったッ!!いや、今も好きだ。だからそんな奴のことなんか忘れちまえッ!!」
突然の告白に呆然とするななしに見つめられて、露伴ははっとしたように耳まで真っ赤になってゆく。
「……別にお前を混乱させたい訳じゃあない。自分がななしの弱みに付け込むようなずるい奴だってのは、もうわかってる。
でもぼくの気持ちをしってほしかったんだ。
ぼくの好きな人はななしなんだ。」
露伴につられてななしも真っ赤になっていた。
『……すぐには無理かもしれないけど……、前向きに考えてみるよ。』
「あぁ、ゆっくりでいい。」
『露伴、ありがとね。』
「でももう遠慮はしないから覚悟しとけよ。」
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