私は今真夜中だというのに、人通りの少ない道を財布も持たず1人で歩いていた。
しかも慣れない高いヒールを履いたから靴擦れがひどくて、ヒールを両手にぶら下げて裸足で冷たいアスファルトを踏みしめていた。
こんな姿誰にも見せられないってくらい惨めで、あふれ出る涙を堪えるので精一杯だった。
でもあんな奴のために泣くなんて絶対いや。
──こうなったのは、ほんの数時間前のことだった。
久しぶりに彼氏と会えるということで、いつもより気合いをいれてオシャレをして彼氏に会いに行った。
デート中は楽しくて幸せだったけど、まさかそこで彼氏の浮気相手にばったり会ってしまうなんて。
いや、自分のほうが浮気相手だったのかもしれないけど。
当然その場は修羅場と化した。
言い合う私達の横で彼氏はただぼうっと立っているだけ。
口を開いたかと思えば、浮気相手の肩を持つようなことばかり言う。
そんな彼氏に呆れたので、私は持っていたバッグを投げつけてその場を走って去ったのだ。
彼氏が追い掛けてくるかなと少しは期待したけど、追い掛けて来る気配もなくてあぁわたしは選ばれなかったんだ、って実感した。
お金もないからタクシーを呼ぶわけにもいかないし、裸足で自分の家を目指すのはちょっとキツいかも。
あっ……、なんか泣けてきた。
いやっこれは振られたからじゃなくて、歩くのが辛くてだから!
────プルプル
その時ななしの携帯が鳴った。
かろうじて携帯は所持していたのだ。
「もしもし、ななしか?」
ななしは幼なじみの声を聞いて安心したのか、電話に出た瞬間涙が溢れてきた。
『うー…、露伴……ッ!』
「お前泣いてるのか!?」
『ないで…なんがないも…ん…。』
「泣いてるだろうが。まったくどうしたんだよ。今どこにいる?迎えに行くから。」
ため息をつきながらも、優しくしてくれる露伴にまたななしは泣けてきた。
やっとのことで、ななしの居場所を聞いた露伴は数分後にななしの元にたどり着いた。
「っはぁ、はぁ。お前なんで裸足なんだ?」
『靴擦れ痛くてさ。
あれ?露伴、バイクで来ると思ってた。走ってきてくれたんだね。』
「あぁ。お前の家に行ったら、夜中なのに留守だったから電話したんだ。でななしの家からまっすぐ来たからな。」
『…ごめんね、留守にしてて…。』
「別に気にしてないさ。
……ところで、お前これからどうやって家に帰る気か?裸足で歩いていくのか?」
『………。』
「しょうがないな。……乗れよ。」
そう言って露伴はななしの前に背中を向けてしゃがみこむ。
『えっ!?いいの?私重いよ!』
「いいから早く乗れッ!!気が変わる前にな!」
露伴に気圧されたななしは、しぶしぶ露伴の背中に乗った。
ななしは思ったよりもずっと広い露伴の背中で、揺られながらいつの間にか寝てしまっていた。
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