私と露伴はいわゆる友達以上、恋人未満の幼なじみ。
まぁ私のほうは露伴が好きなんだけど。
昔からたくさんの女の子に言い寄られていた露伴が私が露伴のこと好きなことを知ったら、うんざりされるのは目に見えている。
だから、私はこの思いを絶対にバレないようにしてるんだ。
素直になりたいとは思ってるけど、気持ちを知られちゃいけないっていう気持ちと葛藤して全然可愛くない態度をとってしまう。
このままだと私の気持ちが露伴に届く日は一生来ない気がする。
そんなアンニュイな朝に露伴から電話があった。少しは期待したけど、思った通り私をこき使うようなないようだった。
『また、いきなり呼び出して。朝の5時からなんの用ですか!?』
「あぁ、やっと来たか。ちょっと新しいコーヒー豆を買ってきてくれないか。僕はこのコーヒーを飲まないと、1日が始まらないんだ。昨日丁度きらしてね。」
『自分で行けっての!あたしはあんたのパシリですか!?』
「厳密に言えば、幼なじみという名の召使いかな?」
『はぁ?冗談じゃないッ!!誰が露伴の召使いよ。』
「僕はいたって真面目だ。だから早く行ってこいよ!」
普通の女の子なら、好きな人に頼まれたことは嫌な顔一つせず、やるだろう。でも私は素直にうん、と言うこともできない。
毎度毎度こんな女の子の「お」の字もないような自分の態度にため息をつく。
最近露伴は女性編集者と一緒に取材に行く機会が多かった。
女が嫌いな露伴でも、仕事とならば2人ででかけていた。
でもそれはななしにとっては気に食わないことでもあった。
ななしはその編集者に会ったことがあり、それはそれは美人で大人の雰囲気が漂ったステキな女性だった。
(私が露伴なら絶対ホレてるわ……。)
ななしには最近焦りしかなかった。
でも態度はいつもと変わらず、ツンケンしてしまう。
ある日突然
露伴がななしに質問してきた。
「なあななしは今恋してるか?」
『なっなんで、そっそんなこと聞くの!?』
「いや、恋する女のリアルな感情が知りたいんだ。記憶を読んでもいいんだが、一応きいてみたんだ。」
『いっいやッ、恋なんてしてないよ、うっうん。』
「そうか。それもそうだよな!!
女性は恋をすると綺麗になるっていうが、そういうところがお前には無縁だッ!」
『失礼な!!あたしだって綺麗になろうと努力してるよ。これでも…。』
露伴に少しでも振り向いてほしくて、普通の女の子並みには努力してきたつもりだった。
オシャレもしてるし、露伴に会う時は化粧もいつもより頑張ってる。
なのに、
「ハッ!!努力してこのレベルか!少しは僕の担当の奴を見習ったらどうだ!?顔だけはいいからな、あいつ。」
『なにそれ…。露伴もしかして担当の人に気があるの?』
「どこからそんな話になるんだ?。僕はそんな気はまったくない。仕事とプライベートの区別もつかない、ほんとお気楽な脳みそしてるな。」
『ッ、だよね。ごめんね、変なこといって。』
ななしは、露伴が担当の人を好きではないということに安心はしたものの、自分と担当の人を比べられ、そして劣っていると言われたことにショックを受けた。
「私…、帰るね。邪魔みたいだし。」
ななしは溢れ出る涙を露伴に知られないように、露伴の家を走って出た。
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