わかってる、今はあなたがあの子しか見えてないことくらい。
でも私は必ずあなたを振り向かせてみせる。
「ニョホホ!くまちゃんかわいいなぁ。」
『ジャイロいつまでそのくまと遊んでるの?』
「くまじゃあねぇ!くまちゃんだ!女の子なんだぜ、リボン付いてるだろ!?」
(ぐっ……!!かっかわいい…、くまちゃん。でもジャイロは渡さないッ!!)
くまちゃんの可愛さを認めたら負けな気がして、私はわざと冷たく応えた。
『ただのぬいぐるみじゃない。』
「ちげぇよ!おれの宝物だ!」
『どうでもいいわ。』
「冷てぇ女だぜ。」
『どっちがよ!?』
違う、あなたに冷たくしたかった訳じゃあない。私はただ…
『せっかく遊びに来たのに、かまってくれないのが悪いんじゃない…。』
するとジャイロは口角を上げて笑った。
「くまちゃん、聞いたかぁ?おれにかまってほしいんだとよ。」
ジャイロは顔が真っ赤になる私を見て、自分の方に私を引き寄せた。後ろから抱き締められて、耳元でジャイロが囁く。
「これからおたくのことも、たっぷり可愛がってやるよ。」
それからの2人は、床に寝転んだくまちゃんのみぞ知る。
───やっと素直になりやがったか、ぬいぐるみに嫉妬するなんて可愛いヤツ。
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