『ちょっとストップ!』
「どうしたんだい?」
『どうしたもこうしたも、これ何さッ!!』
そう言って、ゲームを花京院の前に突き出す。
あからさまにヤバイという表情をする花京院に、ななしのボルテージは上がる一方だった。
『花京院がゲーム好きなの知ってるけど、彼女いるのにこういうのやる?普通。花京院は私だけじゃ、満足できないんだね。』
「ちっ違うんだッ!!」
『もしかして私と付き合ったのも、こういうことしたいだけだったら他の人あたってよ。』
「僕はななしが好きなんだよッ!!」
『もう今日はいいや、頭整理させて。私今日は帰るわ。』
花京院の必死の制止も甲斐無く、ななしは花京院の家を飛び出していった。
次の日。
ななしは承太郎と2人で屋上にいた。
『承太郎、昨日ケンカしちゃったよ!なんか身も蓋もないこと言っちゃったし!!』
ななしは実際、昨日花京院が自分と付き合うのは体目当てだなんてこれっぽっちも思ってないが、その場のノリで口が滑ってしまったのだ。
「お前らのことなんて知らねぇよ。やかましいッ!!」
『そんな事いわないでよ。なんか昨日花京院の部屋言ったら、ほら……その…エロゲーと呼ばれる物があったんよ。』
「今さらかよ。」
『頭ではわかってるけど、自分だけじゃ満足してもらえてないことがショックなんだよ…。』
急に声も小さくなり、下を向いてしまうななしの頭を承太郎は少し乱暴に撫でて髪をぐしゃぐしゃにした。
「おめぇは余計な心配なんかするな。もっと自信もて。」
うん、と返事をするななしに微笑むと、承太郎は屋上のドアが開く音を聞いた。
「おっと、おいでなさったぜ。花京院がよ。」
そう言われてななしが顔を上げると、もう承太郎はいなくなり、その代わりに花京院が目の前にいた。
『花京院……。』
「ななし、昨日のこと言い訳するわけじゃないけど、説明させてくれ。」
『うん。』
「・・・仕方ないじゃないかッ!!だって僕はずっとななしが好きだったんだよッ!?」
いきなり大声で叫ぶ花京院にななしは驚いて目を見開く。
「ななしは最近僕のこと好きになってくれたけど、僕はずっと昔から好きだったんだよ。
君と話すようになる前からずっと、君を見てた。」
「好きで好きでたまらなくて、君とこんなことしたいって理想をゲームで叶えてた。」
『そうな…んだ。』
「変態だってひくよね?でもそれくらい我慢できなかったんだ。
実際付き合ってからは、一緒にいれるだけで嬉しかったけど、僕も男だから君にもっと触れたいって……!!」
恥ずかしい言葉を人がいないからといって大声で叫ぶ花京院にななしは赤面した。
「君と付き合ってからは、ゲームは一切してないっ!!
もう僕はななし以外の女の子なんて興味ないからッ!!
神に誓うよッ!!」
必死で弁解する花京院が少しおかしくて、ななしはクスクス笑いだした。
『花京院がどんなに私のこと好きかわかった。私、花京院を信じるから。』
「本当かい?別れるなんて言わないよね?」
『うん言わないよ、ずっと一緒にいる。』
「ななし、ありがとう。」
そういって抱き締めあい、花京院がななしの耳元で囁いた。
「だから君もよそ見しちゃだめだよ。僕だけ見てて、僕だけ満足させて……。
何言っても絶対に逃がさないからね。」
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