ワン魂
□第16訓 作戦は成功するとは限らない
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銀時がヘンディ苛めを終えて、ご飯を食べに船内に戻ると何故かエースの姿が見あたらなかった。
「あれ?あいつは?」
「エースさんですか?エースさんなら行きました」
「銀ちゃガツガツんにモグモグよろしハグハグく言ってズズズッたネ」
銀時が問いかけると新八と神楽が答えた。神楽は朝ご飯を頬張りながらしゃべっているので、一見何を言ってるのか分かり辛いが……どうやら、エースは銀時によろしくと言っていたらしい。
「神楽!!何言ってんのかわかんねぇよ。口に食べ物ある時はしゃべっちゃダメってお母さん言ったでしょ!!」
「うるさいネ。後妻のくせに母親気取りアルか?私、お前を母親だなんて認めてない」
銀時が注意すると神楽もきっぱりと言った。朝から嫁と義娘の愛憎劇場が始まりそうである。
「ちょ、二人とも……何始める気ですか!!朝から昼ドラやる気ですか!!」
新八が二人の間に割り込んできた。すると銀時と神楽はつまらなそうに朝ご飯を食べながら新八にグチグチ言い出した。
「オイオイ、ノリがわりぃな」
「本当ヨ。空気読んで欲しいアル」
「「これだから新一になれないんだ/なれないアル」」
「待てェェエ!!新一にどうやってもなれねぇよ。名前だから!!ってか八の何が悪いんだァァァアア!!」
二人の言葉に新八は叫んだ。しかし銀時も神楽もそんなこと知ったことないと言った感じでズズズッと味噌汁を啜った。
新八は二人の様子に額に青筋が浮かぶ。しかし、ここで怒っては相手の思うツボである。それに小説がいつまでも先に進まない。ここは新八が冷静に対処するしかないのだ。もちろん小説のために……。
新八は深呼吸をした。そして、二人を見つめると真っ白な紙を出した。
「そういえば、エースさんが去り際にもう一度会えるようにとこれを渡してくれたんですけど」
新八の出した紙を銀時はモグモグと口を動かしながら見つめた。紙は真っ白で何も書かれてない。そして何故か微かに動いてるように見える。
きっと神楽が暴れて近くの壁に穴が開き、そこから隙間風でも吹いてるんだろう。
銀時はそう思うと新八から紙を受け取った。
「真っ白な紙ってのは大体アレじゃねぇ?あぶり出しとかじゃねぇの。あいつ炎だしよォ」
銀時はそういうとクンクンと紙に鼻を近付けて匂いを嗅いだ。あぶり出しなら、紙からそれっぽい匂いがするはずである。しかし、その紙にはそんな匂いはしなかった。
(あ?あぶり出しじゃねぇのか?)
銀時は眉間にシワを寄せるが、今考えてもよく分からないので紙を懐へとしまった。
「まぁ、あれだ。とりあえず先に済ませることやるぞ」