銀色

□第9訓 双子なのに似てないって有りだよね(後編)
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ジュリアが破水して屋敷中が大混乱した。
ただでさえ、バリケード作りのせいで男手は無く、避難してきた住民を迎えているのだ。

「ジュリア様、もう少し辛抱して下さい。すぐに産婆を連れてきます」

メイドの一人がジュリアをベッドに寝かせると言った。
ジュリアは弱々しく首を振る。

「無理、もう無理!!産まれる!!」

ジュリアの言葉にメイドは急ぎだす。

「ギントキ様、ジュリア様がまだ産まないようによろしくお願いします」

「え?……いやいやちょっ待って……ってもう居ないしィィイ!!」

ギントキにムチャなお願いをするとメイドは産婆を呼びに行った。

ギントキは困ったように眉を寄せる。


そんなギントキに気づいたのだろう、ジュリアは弱々しくにっこり微笑んだ。

「ギントキ、そんな顔しないでも……大丈夫よ」

ジュリアの言葉にギントキはグッと手を強く握った。

(俺は何やってんだ!!母上は大変なのに)

ギントキは自分の頬をパチンと叩いた。

「母上、俺がついてるから安心して」

ギントキは力強く言うと、ジュリアを安心させるようにっこり微笑んだ。





ここは、二つの魂が佇む真っ暗な空間。

ピンク色の魂が何をしたのか……何かを割った後この空間に違和感が生じ始めていた。

(――ちゃん!!――ちゃん!!)

眼鏡色の地味魂が慌てたようにピンク色の魂に思考を送った。

ピンク色の魂は面倒そうにそれに答える。

(何アルか?)

(なんか周りにあった何かが流れ出る気がするんだけど……大丈夫かな?)

地味眼鏡魂が呟くと、ピンク色の魂の子も感じていたのか少し反応した。

(ッ……た、多分大丈夫ヨ)

ピンク色の魂の言葉は不安に満ちていて弱々しかった。






さて、ギントキのほうだが、まだメイドは産婆を連れてこない。
ギントキはジュリアの手を握りドアをチラチラと見た。

時折、ジュリアの苦しそうな声が聞こえる。

(どうしよう、どうしよう)

ギントキは再度オロオロとしてしまう。
こんな時どうすればいいのか……経験がないので分からないのだ。

ギントキは頭をフルに使って考え込む。

(そ、そうだ)

「母上、真似して!!ヒッヒッフー、ヒッヒッフー」

ギントキは必死になってラマーズ法を試してみる。
ジュリアはギントキと同じように呼吸をした。不思議と痛みが楽になったように感じる。





(なんかこの空間狭くなってない?)

地味眼鏡魂が呟いた。ピンク色の魂もそれに肯定する。

(確かに……ってあれ、何アルか?)

ピンク色の魂がある方向に視線を向ける。
見てみると、まだ小さいが光が見える。
二つの魂はゆっくりと導かれるようにその光へと近づいた。





「ジュリア様、ギントキ様、お待たせしました!!」
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