銀色
□第8訓 双子なのに似てないって有りだよね(前編)
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ゴウゴウと凄まじい風と雨が窓をガタガタと揺らす。
空はピカピカと雷鳴が轟き、雨がザアザアと勢いを弱らすことなく降っている。
ギントキは、見ていた本から目を離し窓から外を見てため息をついた。
「ジュリア様、やはりこの嵐ではショウヨー様はお帰りになれないそうです」
メイドの一人が告げるとジュリアはコクンっと頷く。
そして、ギントキににっこりと笑顔を向けた。
「ギントキ、パパは帰れないようだから今日はママと二人っきりで過ごしましょうね」
ギントキに近づくとジュリアはフワフワとした頭をよしよしと撫でる。
そして、良いこと思い付いたとばかりに口を開く。
「そうだわ、今日はショウヨーも居ないし、ギントキの大好物尽くしにしましょう」
そう言うと、ジュリアは意気揚々とキッチンへと向かおうとした。
そんなジュリアにメイドとギントキは慌てる。
「お、お待ち下さいジュリア様!!」
「そうだよ。母上はそろそろ予定日なんだから、キッチンに立ったらダメ!!」
メイドとギントキは即座にジュリアを止めた。
ジュリアは大きくなった自分のお腹を見ると少し残念そうに呟く。
「二人とも、心配性ね。まぁ、いいわ」
ジュリアは、キッチンに向かうのをやめ椅子へと腰かけた。
その時である、屋敷内をドタバタと走る音が聞こえた。
「ジュリア様!!大変です」
屋敷の使用人がドアを開けて入ってきた。
部屋の中にいたジュリアたちは視線を使用人に移した。
「いったい、どうしたの?」
「それが……この嵐で川が増水して、今にも溢れてしまうと連絡が入りました。どうしましょう」
使用人の言葉にジュリアは目を見開くとスッと立ち上がり、怒鳴りつけた。
「どうしましょうじゃないわ!!川の近くに住んでる住民をこの屋敷に非難させなさい!!そして、屋敷の男たち全員で川が溢れないようにバリケードを作るの!!ほら、急いでッ!!」
「は、はいッ!!」
使用人は、ジュリアに言われると指示通りに動くため大急ぎで出て行った。
使用人が出て行くと、今度はメイドへと視線を向ける。
「皆に言って大量のタオルと毛布を用意して頂戴!!」
「かしこまりました」
メイドは言われた通りにテキパキと動き出す。
ジュリアはそれを見ると小さく呟く。
「これで大丈夫かしら……けど嵐の中、非難しに来るんだもの。冷えた身体を温める飲み物が必要よね」
ジュリアは考え込み。ポンっと手をうった。
「そうだわ、スープでも作りましょう。さっそく……」
「母上!!俺が作るッ!!」
自ら作ろうとするジュリアに気づき、ギントキはきっぱりと言った。
ジュリアは、ギントキの言葉に驚いたように目をぱちくりさせた。
「ギントキが?」