短ブック

□変化球的直球
1ページ/1ページ

「ロー」

それは気分だった

なんとなく、呼んでみたくなっただけだった

「?・・・・なんだ」

甲板にできた小さな日陰で本を読むローはその目を私に向けた

別に気にしてた訳ではないけどなんか優越感

「呼んだだけ」

そう言って私はローの隣に腰を下ろす

「相変わらず突発的なやつだな」

「んん?そんな事ないこともある」

「はあ?・・・・くくく、そうだな」

私のバカみたいな答えにローはちゃんと答えてくれる

「ふふ、うん」

「・・・・・・」

「・・・・・・・」

それだけ言って会話は途切れた

唐突に終わったなぁと思いながらもとくに緊張する事もない

ローとの沈黙はとても心地いいから

さざなみの音に耳を傾けながら今日はやけに静かだなと思う

いつもはみんなの声が聞こえるのに

まぁ、そういう事もあるとまとめてボーーーッと海を見る

つい数年前までは見なかった世界

小さな世界に嘆いていた自分が惨めな程大きくて、色んな素晴らしいもので溢れる世界

もちろん私一人では大きな世界を知る事もなく土の中で睡眠していた

でも腕を引っ張り、私を連れ出してくれたのだ

『俺が世界を見してやる』と、この隣の人物が

「今度はなんだ?」

「な〜んにも」

ちょっと見てただけでも気づかれた

というかローを見た時にすでに目があってたように思うんだけど・・・・気のせいか

「・・・・セレナ」

「?なーに」

唐突に呟かれた私の名前

「呼んだだけだ」

「へ?・・・・ふふ、パクりましたか」

「いや、俺が考えた」

「著作権の侵害です」

「残念だが海賊に法律はきかねぇ」

「う・・・・」

「くくく」

やっぱり言葉ではローに勝てない

いや、他の事とかでも勝てないけどさ

それは置いとこうね、悲しくなるからさ!

「そんなむくれるな、くくく」

「別に〜?むくれてないよー」

「そうか?」

「うん」

ちょっと両頬に空気を入れてただけですから

別にむくれてるとは言わないよー(棒読み)

「ふぁ・・・・」

「眠いのか?」

「お昼寝の条件がお手て繋いで私を囲ってかごめかごめしてる」

「くく。要するに?」

「眠い」

そのまま頭をローの肩に預ける

「そうか」

そう言ってローも私の頭の上に顔をよせた

「ロー」

「ん?」

「呼んでみただけ」

「ククク、セレナ」

「・・・・呼んでみただけ?」

「いや、キスしてぇ」


変化球的直球


「・・・・・あ」

「くくく、驚くな」

「いや、だっだって・・・っ!」

「んじゃ、おやすみ」

「え・・・・うぅっ」

「起きた時にまたしてやるよ、セレナ」

「〜〜〜〜〜!!・・・・アイアイ」

早く目を覚ましたいと思ったのは、大分ほんとだったりする

END
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ