短ブック

□自由気ままなマシェリの空腹
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今日は天気がいいから・・・・っと、彼女は言った

俺が起きた時にはもうすでに出掛ける準備をして待っていた

ニコニコと笑って俺を見上げて『いい?』と言った

くくく、本当に困った確信犯だ

俺がノーと言わない

いや、言えないのを知っていて言ってやがる

苦笑しながら額にキスを落としてやればすぐに抱き着いてきた

そのままで一日すごそうかと思ったがそんな事をすれば拗ねられるから後ろ髪を引かれながら朝飯を食った

「ロー、ほら!」

朝の事を思い出していればセレナが何やら俺に手招きしてきた

川の近くにある公園について1時間

子供のようにはしゃいでいた彼女が俺にやっと視線を向けた

ベンチと離れたがらない腰を上げて軽い足取りで近づいていく

「どうした?」

「これ!」

彼女は自分の指差す方向を一心に見ている

俺も彼女と同じようにそちらを向く

川のまわりに咲く桜が散っていく

別段珍しい光景でもない

だが彼女はきっとこの光景を俺とは全く違う捉え方をするのだろう

予想通り発せられた言葉は俺の捉え方と違った

「川に桜の絨毯が出来てる!」

子供のように無邪気な笑顔で俺を嬉しそうに見る

確かに、目線を少し下にずらせば川に流れる桜が見える

「ああ・・・そうだな」

「綺麗だね」

「ああ、綺麗だ」

真っ直ぐに物事を捉えられる彼女が

「ね!すっごく綺麗〜。歩いてみたいな〜」

「くくく、水浸しになるつもりか?」

「なっ、違うもん。そうゆう意味じゃありませ〜ん」

「じゃあどういうつもりなんだ?」

「うっ・・・えっと、それは・・・・」

困った顔で目をあちこちに向ける

その目が早く答えを見つけて俺の方を向いてほしい

そっと腕を引き、この腕の中に収める

「もう」

唇と尖らせて拗ねたようにするが『フリ』をするだけで精いっぱいなのだろう

その目は答えを探すのを放棄して真っ直ぐに俺を見つめる

「くくく、分かってる。思った事を言っただけ、だろ?」

「分かってるならなんでああゆう風に言うのぉ!」

腕を俺の腰にしっかりとまわして胸に顔を埋める

「セレナの反応が可愛いから悪いんだろ」

「え〜?私可愛い事何にも言ってないよ?」

心底不思議そうに自分の発言の可愛らしさを否定する

しかしそれも俺にとっては『可愛い』ものだ

「?何笑ってるの?」

「いや、なんでもねぇ」

「?ふ〜ん・・・・」

クルリと回転して俺に背を向ける彼女はそれでもしっかりと目の前に現れた俺の腕を抱き込む

「ロー、重たいよ」

その頭の上に顎を乗せてやれば嫌がりながらも嬉しそうな声音でそう言った

「ああ」

「どける気はないんだ」

「ああ」

それだけ言えば彼女はまた真っ直ぐに川を見つめた

また俺も同じようにする

しかしそれも数秒

唐突に投げられた言葉に予定変更

「お腹すいた」


自由気ままなマシェリの空腹


「くくく、もうそんな時間か?」

「うん、12時だよ」

「なら外食にするか?」

「うん、オシャレにフレンチがいい」

「じゃあそうするか」

「うん!」

END
 

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