短ブック

□物言わぬ君に最後の口づけ
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そう大きくなくとも、よく通る声

「ロー」

その声が俺を呼ぶ度、どうしようもなく嬉しくなる

「もう、何笑ってるのぉ?」

向けられるその笑顔が、俺の前では特別綺麗だ

「えへへ、そーかな〜?」

泣き虫なくせして、誰よりも強かった

「ひぐっ・・・・私、は・・・・誰よりも、強く、いたい・・・!!」

俺が珍しく怪我をした時は誰よりも怒ったな

「私が怪我をしたら怒るくせにっ!もっと、自分の体を大事にしてよ!」

ああ、そういえば前サプライズでネックレスをプレゼントした時は、嬉し泣きしてたなぁ

「も・・・ローのばかぁ・・・・嬉しすぎて泣いちゃったじゃんんんんっ」

誰にでも懐くから、手もやいたが・・・・

「な・・・何、怒ってる・・・の?」

そのくせ俺が少し女と話した位で嫉妬する

「誰、あの人。彼女の前でやることじゃないよねぇ?」

だがそのあと謝るのは必ず俺だった

「・・・・仕方ないから・・・『好き』って言ったら・・・許したげる・・・」

これも惚れた弱みだと思った時にはどっぷりはまってた

「そっ、そんな事、ないよ・・・私だって・・・・」

・・・・・・・なぁ、セレナ

「なぁに?ロー」

俺は、神なんざ信じねぇ主義だが今はそうも言ってらんねぇよ・・・・

「ロー?・・・・本当にどうしたの?」

もう一度・・・・・お前に、会いたかった・・・・


物言わぬ君に最後の口づけ


ピーーーーッ  ピーーーーッ

部屋に響く無機質な音は、確かに命の終りを示していた

「・・・・・・セレナ」

「ペンギン・・・・二人っきりに・・・して頂戴」

「・・・・ああ」

後ろで扉の閉まる音がした

でも私が見つめるのは彼一人・・・・

「ひ・・・どい、じゃんっ。わっ・・・私をっ、おいて、逝く、なんてっ」

ああ、彼の綺麗な顔にたくさん雫が落ちる

「かいぞく、おーに・・・・なるのはっ、どうしたの?ずっと、がんばって・・・ふぐ、た、じゃん」

どれだけ言葉を紡いだって、もう彼は二度と目覚めない

「ロー・・・・ローッ!」

冷たくなった彼の唇に、自分の温かいそれを押し付ける

「ひぐっ・・・・ロー、愛してる・・・・愛してるっ、これからもっ・・・ずっと・・・ずっと・・・・!」

END
 

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