短ブック

□そうして僕は、苦い現実を飲み込む
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「なぁ・・・。」

そんな顔しないでくださいよ。

らしくありませんよ?

「行けないわよ、私は。」

「だが・・・。」

さっきから歯切れが悪い貴方。

こんな姿を見ることが出来るなんて、想像もしていなかった。

「わかってるでしょう?私の夢。」

そうすると貴方は黙ってうつむいてしまった。

「この島をもっとよくすること。それが叶うまでは何がなんでもいけないわよ。」

瞳に映る信念。

それはどんな要塞よりも強く、壊れることのないもの。

貴方も同じ形の信念を持っているからこそ、強く言えないし、攫うことができないんでしょう?

「俺は・・・。」

ずっと黙っていた貴方は少しずつ顔をあげ、真剣な声で、顔で言う。

「俺はかならずグランドラインを制覇して海賊王になる。」

私はキュッと唇を噛む。

この先に続く言葉は分かっている。

「だから・・・・。」

一呼吸おいて、貴方は言う。

「だから、その時は俺と一緒に来てくれ、ミラ。」


そうして僕は、苦い現実を飲み込む


「ええ、もちろんよ、ロー。」

優しい声音でそう言うミラさんを、私は何よりも綺麗だと思った。

それと同時に憎くも思った。

船長に好かれる貴方を、船長の名を言うことのできる貴方を、とてもとても憎く思った。

「・・・・船長、そろそろ。」

「セレナ・・・わざわざすまねぇな。」

ミラさんと話してた時とは違う、しっかりとした声。

あの声は、ミラさんだからこそ聞ける声。

「いいえ、船長を迎えに来る位、礼を言われることじゃありませんよ。」

「セレナちゃん、あなたもさよなら。」

とても憎い、ミラさんがそう言った。

私は少し間をおいてこう言った。

「いいえ、さよならじゃありませんよ。また会いましょう。」

それでも、貴方は船長が認めた人だから、私とは比べられない位綺麗だから。

私はそれ以外、何も言えなかった。

END
 

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