短ブック
□奇跡は繋がっていたらしい
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それはほんの些細な出来事だった。
それでも私にとっては十分奇跡と言っていい程のことだ。
「セレナ?セレナ〜?」
物思いにふけっていると親友のナミが話しかけてきていた。
「ん?何、ナミ。」
「何じゃないわよ。また見てんの?」
呆れたようなもの言いの彼女に私は静かに頷いた。
「たっく、あんな男やめときなさいよ。」
「ううん、あの人がいい。遊び人でもあの人がいい。」
その言葉にナミは折れて帰り支度をしはじめた。
私はというと、今だに自分の席から窓の外の中庭を見つめている。
「それじゃあ、私は帰るわね。」
「うん、バイト頑張ってね。」
「ええ、もちろん。セレナも適当なところで帰りなさいよ。」
「うん。」
私はナミが教室を出て行くまで見送り、そして再び窓の外に視線を戻した。
「あれ?・・・・いない。」
先程まで中庭にいた人物は居なくなっている。
他の場所も見渡したが、どこにもいなかった。
「・・・・帰っちゃったのかな?」
私は肩を落として机に突っ伏す。
あれはいつだったか。
確かまで1年の時だったはず。