短ブック
□人間のエゴだろうよ
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「正義ってなんだろうね。」
私のその言葉にローは本に落としていた視線を私によこした。
しかし、私はローの視線を顔の横に受ける。
「海軍の背中に書いてあるでしょ。『正義』って。」
ローは何も言わず、私を見つめている。
私もローではなく窓から見える真っ暗な海を見つめる。
「海軍にとっては犯罪者から人々を守るのが『正義』。」
その為ならばその家族が悲しもうが牢獄か死に送る。
「私たち海賊にとっては大切なものを命をかけて、どんな手段でも守るのが『正義』。」
誰が悲しもうが、誰を傷つけようが、何がなんでも守る。
「どっちが・・・・正しいんだろう。」
どちらも同じ『正義』で、どちらも違う『正義』。
どちらが正しくて、どちらが間違っているのだろう。
私にはまったく分からない。
今まで経験してきたこと、見てきたこと。
それをふまえても、私には分からない。
「価値観ってのは・・・・人それぞれだ。」
今まで黙っていたローがしゃべりだす。
私はローの方へ顔を向ける。
しかしローの目は私の方を見ていない。