短ブック
□筋書きは塗り替え可能
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眠り姫とはよく言ったもんだ。
眠り姫は王子が来るその時を深い眠りの中に落ちて待った。
なんと皮肉なものだ。
少なくとも私はそう思う。
好きでもない男にキスをされ、目を覚ます。
そしてその男と結婚し、幸せに暮らす・・・なんてありえないことだ。
知りもしない男に一目ぼれする女も女だ。
そんな軽いノリの眠り姫が私は大っ嫌いで仕方ない。
しかし・・・・今この状況では、私はそんなことを言えない気がする。
目の前の木の根を枕にして眠る男。
私はその少し離れた場所に立ち、その男を見ている。
かれこれ数十分こうして突っ立っている気がする。
「・・・・綺麗。」
私は風の音にかき消されてしまう位小さな声でそう呟いた。
体つきは見た限りでは少し頼りないような気がするが、スラリとのびた手足はとても綺麗だ。
男の人に対してそんなことを思うのは不謹慎かもしれないが、事実は事実だ。
そして顔もとても整っている。
スッと通った鼻筋、薄い唇、目元にある隈も、彼を引き立たせているように思う。
濃い紺色の髪も風に吹かれてサラサラと揺れてる。
なんだろう・・・もっと近くで見たい。
そんな欲求が私の中で湧き上がる。
私はそっと彼に近づいていく。