お題ブック

□キャンディ
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キラキラ、イロイロ

それが第一印象というか何というか?

まあそんな感じ

回りくどいのはめんどくさいからね

何かというと両手で持つのすら大変な大きさの瓶

の中に入っているキャンディの事

その袋一つ一つの色がとても個性的だ

マゼンタピンクにマスカットグリーン、浅葱色からローズレッドまでと、とにかく様々だ

それを私は食べる訳でもなくじーーーっと瓶のガラス越しに見つめる

瓶から出してバラ撒いてそれを見るのもとても綺麗な気がする

でも今はそうじゃなくてガラス越しに見たい気分なんだ〜

この、瓶にぎゅうぎゅうに詰まって息苦しそうな感じ

いいね〜、これ

一応言うけど病んでないからね!

「ただちょっと生きてるのだったら窒息死しそうだな〜って思っただけ」

「病んでる発言をするな」

冷静なツッコミが後ろから聞こえた

それに私はムスッとしながら首だけ後ろに向ける

もちろんこの部屋にいる人物なんて私以外にただ一人だ

だって私が彼の部屋に押し掛けた訳だし

「病んでないもん、ローのバーカ」

軽く悪態をついて私は再び瓶詰キャンディを見る

後ろで溜息がつかれたの何て聞こえなかったー

そしてベッドの上を占領する私の後ろにローも座り、私を抱きしめる

あ〜・・・これ好きかもな〜

でも瓶からは目をはなさない

だけどちょっとローに寄りかかる

ここすごく落ち着く

「なあ、ミコト」

「な〜に〜?」

「そんなもん貰って嬉しいのか?」

そんな事を言うローに私がピタリと止まる

「?何で」

でもやっぱり顔は見ないよ

「ずっとそれ見てんだろ。そんな安物、嬉しいか?」

「安物って・・・ローひどーい」

「微塵も思ってねえだろ」

「実際そうだし?でも綺麗だから嬉しいね」

チュッと瓶にキスをしてみる

当然唇に伝わるのは硬くて冷たい感触

無機物だとあからさまに主張される

「何?ヤキモチ?」

ニヤリと唇を歪めて聞いてみる

あ、図星だこれ

今私を抱きしめる腕の力が強まった

「ふふ、無機物にまで嫉妬ですか〜?ねえねえローさーん!」

「その口塞ぐぞ」

「や〜よ」

勿体つけて開けようとしなかった瓶の蓋を開ける

いや、開けようとした

硬すぎて開ける事ができないのだ

しかし心配する事もない

体に回されていた手は私の手元まで来てきゅっと簡単に蓋を開けてくれる

「ありがとう」

「お前が非力なだけだろ」

「握力がないだけ」

「非力」

さっきの発言に対しての反撃なのか非力と繰り返すロー

ちょっと気にしてる事なんだから言わないでよ

瓶の中から私はターコイズブルーを迷わずとる

カサカサと音を立てながら開けるとそれより少し色の薄いターコイズが出てきた

私はそれを目を細めて眺め、口の中に入れる

色の通りやはりラムネ味だった

私はローの腕をそっとはなさせる

一瞬力が強くなってしまったが渋々といった感じではなしてくれた

ああ、こういうところが本当にかわいいな

私は体の向きをかえローと向き合う形になり、ローの頬を両手で包む

目を見開いたローに構わず、ローの唇に自分のそれをつける

緩く開いてる口から舌を忍び込ませ、ローにそっとキャンディを渡した

離れたあと、ローは顔をほんの少し歪ませながら言った

「・・・甘ぇ」

そのキャンディが私がしたのと同じようにして返されたのはお約束という事で


キャンディ


「元はと言えばローがこれ、私にくれたのにね」

「それがどうしたら俺に食わせる事に繋がった」

「え?同じ味共有してみようかと思って」

「甘ぇのは好きじゃねえ」

「知ってる」

「知ってるならやめろ」

「嫌。だってローの歪んだ顔も好きだもん」

「病んでるじゃねえか結局」

「その話もうやめっ!」

「じゃあ二個目を俺にまた食わせようとするな」

「・・・はーい」

「・・・はあ、俺が食わせてやるからかせ」

「!うんっ。やっぱりロー大好き〜!」

「ったく・・・知ってる」

「ふふ、そうだね。知ってる!」

END
 

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