お題ブック
□生意気
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キーンコーンカーンコーン・・・
授業終了のチャイム。
それと同時に開く教室の扉。
授業終わりのあいさつをしようとしているこの静寂の中にとてもにつかわしくない。
「あぁ?まだ授業終わってねぇのかよ。」
扉を開けた彼は壁に寄りかかり、こちらを見ている。
こんな大きな態度をして入ってきて、しかも文句を言う彼に対して誰も何も言わないのはもはやこれが日常茶飯事だからである。
「ありがとうございまいたーっ!」
委員長もそれを分かっているからそのままあいさつを続ける。
それにつられてみんなもあいさつする。
先生が彼の横を通る時びくついていた。
分からないものにはきっとわからないであろう小さなこと。
しかし私はしっかり気付いた。
あの先生も彼に弱みを握られてしまったのだろう。
ご愁傷様。
そう思いながら私はすぐに席を立ち、彼のいる扉とは反対の扉へ向かおうとする。
「どこに行くんだよ、ミコト『先輩』。」
敬語を使わないくせに『先輩』という彼。
わざとらしいその言い方に私はあからさまに顔をしかめて彼を見る。
彼はいつの間に距離を縮めたのか私の目の前に来ている。
私が逃げられないようにか腕をしっかりつかんでいる。
「どこって決まってるでしょ。あんたがいないところ。」
「そりゃあひどくないか?せっかく可愛い後輩が来たってのに。」
ニヤリ・・・・そう笑う彼、ロー。
確かにローは私の一つ下の学年だから後輩ということになる。
しかし・・・・しかしだ。
「どこが可愛い後輩なの?ロー、だいたいあんた私のこと先輩と思ってないでしょ。」
そう言って睨むがローはどこ吹く風。
本当に憎たらしいっ。
「ああ、もちろんお前を『先輩』なんて思ってねぇよ。」
「なっ!あんたねぇっ!」
私は掴まれている腕を思いっきり振る。
しかしそれも無駄に終わり、グイッとローの方へひかれてしまった。
「ミコト、お前は俺の物だ。」
「っつ!」
耳元でそう囁く声はなんとも妖艶で顔が赤くなってしまう。
周りからの好奇の視線にも羞恥を感じて余計に顔が赤くなる。
「だっ・・・・誰があんたの物n・・・・っ!!」
唐突に唇の端に感じた柔らかい感触と先程よりも近くにあるローの顔。
「〜〜〜〜〜〜!?」
少しずつ顔を離していくローは私の反応に満足したのかペロリ・・・と唇を一舐めして私を解放する。
そしてタイミングよくなる授業始まりのチャイム。
ローは上機嫌に、そして妖しく口元を歪めながらこう言った。
「じゃあ、またなミコト。次からはちゃんと抵抗しないと喰うからな。」
生意気
ああっ!
これだから嫌なんだっ。
その声も、表情も、仕草も、態度も全て生意気で。
・・・・・それなのに私を魅了してやまない。
この心臓が壊れてしまうのも、そう遠くないのかもしれない。
END