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□じゅうさん
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たまに不安に思う事があるのだ

私が海賊でいいのかと

私がハートの海賊団員でいいのかと

私がローの恋人でいいのか・・・・と

意味も理由も何一つとして無いことだが不安になる

ただただ不安になってしまうのだ

いわゆる情緒不安定な状態だ

そんな時はいつも以上に笑顔でいる

みんなを心配させたくないしこんなくだらないであろう事を知られて呆れられたくないのだ

「うう・・・ひぐっ」

ボロボロ大粒の涙を流しながら私は蹲り不毛な言い訳をくりかえすのだ

そこに意味はないし、悲しむ理由もない

「ぅああ・・・・」

なるべく声を押し殺すようにして部屋で泣く私はなんて惨めなんだろう

理由もないことに泣くのはもっと惨めだ

なんでなんでと小さく嗚咽と一緒に呟きながら手を握りしめれば爪をたてすぎて少し血が出てきた

「ォ・・・・ロォ・・・・」

大切な恋人の名を言えば少し心が温まるように感じる

しかしその後に襲う不安に堂々巡りと言うやつ

「ふ・・・ロォォ・・・・」

「なんだ?」

「!?」

かえってくるくるはずの無い返事に驚き振り返れば私が口に出していた人

「ロォ・・・・」

「はぁ、また一人で泣いてんのか」

その口ぶりは私が何度も一人で泣いている事を知っているようだ

なんでって言葉も、どうしてって言葉も出てこなかった

代わりに出てきたのは・・・・

「ロォ・・・・・ロォオオオオッ!」

大切な恋人の名前だけでそれ以外何も出てこなかった

ただ小さな子供のようにロー、ローっと何度も何度も繰り返すのだ

「・・・ほら」

「うぇ・・・ひぐ・・・・?」

こちらに伸ばされた両手

不思議に思いながら見つめれば一言

「こっちにこい」


その両手に全てをゆだねた


その言葉に動こうとしなかった体が嘘のように動いた

気が付けばすでにローの腕の中にいてボロボロ流れていた涙を激しさを増した

「ロォ・・・・ロオオオオッ」

「ああ、大丈夫だ。ここにいる、離れない」

「ぅああああっ」

すがりつくように力強く抱きしめればその倍の力でローは抱き返してくれる

「もう一人で泣くな、不安になる」

「うっうん・・・なさい、ごめ、なさっ」

「ああ、いい。分かればいい。だから好きなだけ泣け」

その言葉にほんの少し止まりかけた涙は再び流れ出した

悲しいのに、胸が痛くてたまらないのに、今がとても幸せで仕方ない

そうはじめて思った不安な日

END
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