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□じゅういち
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本を読んでいた俺の前を何かが通っていった

ふっと顔を上げれば部屋の中を自由に舞う蝶が目に入った

たく、部屋主の許可なく入るなんてなんてやつだ

・・・・それはもう片方の蝶にも言えることだろうか

「どこから入ってきたんだろうね」

俺のベッドに無断で寝転がる彼女は自身の真上を飛ぶ蝶を見つめてそう言う

「さぁな」

「ここに用があって来たりして」

突飛な事を言う彼女を俺は真っ直ぐに見つめる

そして更に突飛な事を言い出すのだから目を見張る

「ローみたい」

「・・・・どこがだ」

「目的の場所までしっかりと来たとことか、綺麗なところ」

「目的かはわかんねぇだろ」

「そういう事にしたの。綺麗ってのは否定しないんだ」

ニヤリと妖絶に笑うその姿に俺の唇の端もクイッと上がる

「俺はまず、自分が蝶みたいだと言われたところから否定するからな」

「え〜」

「俺はお前の方が蝶だと思うからな」

その言葉に彼女は年よりも幼いような顔で目をパチクリとさせた

「どこが・・・?私が蝶・・・??」

その心底不思議そうな顔がツボになる

落ち着いた雰囲気の彼女が時おり見せるその姿は可愛らしいものだ

「飽きたらすぐに他のとこに行く、猫よりも気まぐれなところとか」

「ローに対しては絶対にそんな事ないと思うけどね」

自信満々に言う彼女に心の底でホッとしている自分がいて少し驚く

「蝶のような美しさを持つところとかなぁ」

「ローの口からそんな言葉が出るとは・・・!」

「うるせぇ」

俺でもかなり以外だ

こんなクサイ台詞を言う事になるなんて考えた事もねぇ

少し思案した後彼女はベッドから降りて俺の上に見つめあう形で座る

そしてまた突拍子もない事をその口から吐くのだ

「私は蜘蛛のがいい」

「くくく、女郎蜘蛛か?」

「ん〜・・・そんなとこかな」

蜘蛛・・・・ねぇ

「なんで蜘蛛がいいんだ?」

普通なら蜘蛛よりも蝶の方がいいものだろう

「私の中ではローは蝶なの」

「くくく、そうか」

すでにこいつの中では俺は蝶らしい

全く、自分の意見をなんでも通したがる

俺もそうか?

「で、私は蜘蛛だと捕まえられるじゃん」

「・・・?」

「だから、私が蜘蛛なら、蝶であるローを私の領地にずっと縛っておけるの。ずっとずっとね」

満面の笑顔でそう囁くように言う彼女に俺は一瞬面食らう

そしてその独占欲を心地よく思いながらも、苦笑いでこう言うのだ

「お前に食われるのも、悪くは無い」


蝶は自ら飛び込んだ


「ふふふ、ローは私に食べられるの?」

「お前が蜘蛛で俺が蝶ならな」

「ふ〜ん、でも大丈夫。私は頭の良い蜘蛛だから」

「くくく、そうか」

「ええ、だから食べずに傍に置いておく」

「くく、俺から手を出す事もできるのか?」

「私から離れなければ」

「それも杞憂に終わるだろうな」

「そう。じゃあ、私がローから離れるかもしれないという事も杞憂で終わるわね」

「ああ、当然だ。お前が離れる時には蜘蛛の糸でもなんでも使って縛り付けてやる」

END
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