ペンギンブック

□その少女、極甘につき胸やけ注意
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「ペンギンって優しいね」

「・・・・そうか?」

今まで俺を観察するようにずっと見ていた彼女は開口一番にこう言った

その言葉にとまどいつつもさほど驚いていない自分がいた

まあセレナが突飛な質問をしたりするのはいつもの事だしな

「うん、優しい、優しいの」

『優しい』その言葉を噛み締めるかのようにセレナは呟き続ける

口元は円をかたどっているのにどうにも腑に落ちない

「いつも優しい」

「そんな事はないと思うが・・・」

「ううん、優しい、紳士、優しい」

言葉も何か子供じみたような言い方のような気もする

いつもはもうほんの少しきちんとしている

・・・・・別に彼女の語学力が少しばかり乏しいなどとは言っていない

決して、言っているつもりは、ない

「・・・・みんなに優しい」

「?」

一瞬声のトーンが下がったように感じた

いや、確かに下がった

目の奥がギラリと小さく光る

「目の前で小っちゃい女の子が倒れて怪我したら手当すぐにしてあげるし」

「ああ、そんな事もあったな・・・」

二つ程前の島だっただろうか?

「知らない女の人に何か渡された時も突き返したけど優しく宥めてたし」

「それも・・・あったな」

何時だったかは忘れた

船長じゃないが興味がない事だしな

「船長が連れ込んだ女の人外まで送り出したし」

「それは船の中にずっといられたら迷惑だから・・・・で・・・・」

はた、と気づく

セレナが先ほどから優しいと連呼していた理由も

笑顔なのにそれが腑に落ちない理由も

女に『優しく』した事ばかりを言う理由も

何もかも、分かった

「なぁ、セレナ」

「なーに?ペンギン」

なおもニコニコ笑いながらも目が笑っていない

その姿が、どうしようもなく愛らしく見える

実際俺の目元は細くなり、口元も緩く円を描いている

「俺は嬉しいよ」

「・・・・ん?」

「嫉妬したんだな?」


その少女、極甘につき胸やけ注意


そう言えば真っ赤になるセレナがかわいすぎる

嫉妬してた事もだが、さっきまでの饒舌なものからこうも赤くなると余計にかわいすぎる

「な!う!しっ・・・!」

「くくく、かわいいな」

「そっそんなことn「ある」っ!」

「色んな奴に嫉妬して、かわいいな」

「〜〜〜〜!」

恥ずかしがりながら俺に抱きついてきたセレナを俺は笑顔でぎゅっと抱きしめる

ああ、本当にかわいい

END
 

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