短ブック
□幸せ色の帰り道
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私は目に入った噴水の淵に腰かける。
水の流れ落ちる音が心地いい。
空はもう、オレンジから青になろうとしていた。
「・・・・綺麗だなぁ。」
目をほんの少し細めて空を眺める。
夕日が雲をオレンジに染め、反対方向からは夜の闇が覆いかぶさろうとしている。
けして暗い訳ではないけれど、明るい訳でもない。
・・・・・まるで私の感情そのものだ。
ローに八つ当たりしたからといってスッキリする訳でもないし、完全に沈み込む訳でもない。
「ワンッワンッ!」
「ん?・・・・・お前、どうしたんだい?」
足元を見るといつの間にきたのやら、小さな犬がいた。
首輪も紐もついていることから、散歩の途中に逃げ出したとみえる。
「かわいいね。ふふっ、人なつっこいんだねぇ。」
頭や喉を撫でてやると嬉しそうに目を細めた。
「迎えが来るまで一緒に待ってよっか。」
「ワンッ!」
まるで返事をするように犬は鳴く。
尻尾を振り、私の膝に飛び乗る犬。
そして気持ちよさそうにうずくまった。
私はその体を優しく撫でる。