短ブック

□幸せ色の帰り道
2ページ/5ページ

私は目に入った噴水の淵に腰かける。

水の流れ落ちる音が心地いい。

空はもう、オレンジから青になろうとしていた。

「・・・・綺麗だなぁ。」

目をほんの少し細めて空を眺める。

夕日が雲をオレンジに染め、反対方向からは夜の闇が覆いかぶさろうとしている。

けして暗い訳ではないけれど、明るい訳でもない。

・・・・・まるで私の感情そのものだ。

ローに八つ当たりしたからといってスッキリする訳でもないし、完全に沈み込む訳でもない。

「ワンッワンッ!」

「ん?・・・・・お前、どうしたんだい?」

足元を見るといつの間にきたのやら、小さな犬がいた。

首輪も紐もついていることから、散歩の途中に逃げ出したとみえる。

「かわいいね。ふふっ、人なつっこいんだねぇ。」

頭や喉を撫でてやると嬉しそうに目を細めた。

「迎えが来るまで一緒に待ってよっか。」

「ワンッ!」

まるで返事をするように犬は鳴く。

尻尾を振り、私の膝に飛び乗る犬。

そして気持ちよさそうにうずくまった。

私はその体を優しく撫でる。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ