短ブック
□その距離、実に30cm
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コツン・・・コツン・・・・。
学校が終わり、図書館の2階に行くとすでに彼が来ていた。
(珍しい・・・。)
いつも私が席に着いたあたりに彼は階段を上ってくる。
それが今日に限って私よりも先に来て本を読んでいたのだ。
いや・・・・それだけならまだいい。
(なんで私の正面?)
彼はいつも私が座っている席の真正面の席に座っていた。
私がいつもの席に座ればちょうど机を挟んで座るかたちになる。
(本当はずっとあそこの席に座りたかったのかな?なら座ればいいのに。)
しかしそういう訳にはいかなだろうと私は考え直した。
席は他にもたくさん空いてるのに人の正面の席に座ることはない。
私は今回は特等席を彼に譲ることにした。
一日位別にいいだろう。
それにあそこは私の特等席であって私の場所じゃない。
私が彼に指図していいことじゃない。
私はいつもの席の斜め後ろの席に向かって歩き出す。
ちょうど彼と机を挟んだところを横切ろうとした時・・・。
「おい、お前。」
いつもは聞こえることのない、声が聞こえた。
「・・・・?」
私はこんな静かな中で声が聞こえる訳が無い、とそれを幻聴として処理をした。
「・・・お前、聞こえてるだろ。無視すんな。」
「へ・・・?」