アルファルド
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『祭り?』
大広間に隊士達が集まり、前で土方が話をする。
「あァ。祭りの当日は真選組総出で将軍の護衛につくことになる。
将軍にかすり傷一つでもつこうものなら、俺達全員の首が飛ぶぜ!
そのへん心してかかれ」
土方の鋭い視線が隊士達を射抜く。
「それからコイツは未確認の情報なんだが、
江戸にあの高杉晋助が来てるって情報だ」
『…!!』
土方の言葉を聞き、目の色を変える梨乃。
「万が一高杉を見かけても、絶対にやり合おうとするな。奴は危険過ぎる。
特に梨乃、お前は顔も割れてるし一度接触してる。気を付けろ」
『・・・・・』
梨乃は膝の上に置かれた拳をギュッと握りしめた。
祭り当日―――
土方、梨乃、近藤は将軍のいる櫓(やぐら)の下で護衛をしていた。
山崎は将軍が食べたいと言ったたこ焼きを買いに行き、戻ってきた頃には既にほぼなくなっていた。
山崎の口の周りについたソースと青のりがたこ焼きの行方を知らせる。
土方が山崎に制裁を加えていると、近藤が残りのたこ焼きを頬張りながら口を開いた。
「今日はコレきっと何も起こらんぞ!ハメはずそーぜ」
「何寝ぼけたこと言ってんだ!この会場のどこかに高杉の奴がひそんでいるかもしれねーんだぜ。
奴の手にかかって一体どれだけ幕吏がやられたと思ってんだ」
そう言うと前方に見えるステージに目を向けた。
「攘夷だなんだという思想とは奴は無縁。まるで騒ぎを起こすこと自体を楽しんでるようだ。
そんな奴がこんなデケー祭りの場を見逃すわけねー」
土方が向ける視線と同じく、梨乃も自然と同じ方向に目を向ける。
『…ちょっと煙草、吸ってくる』
梨乃は目線を逸らし、そう告げるとその場を離れた。
これから起こる事件を、誰もが予想だにしなかった。