アルファルド

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合成獣との戦いから1ヶ月、土方の怪我も完治し退院して屯所へと戻ってきた。








季節はいつの間にか移り変わり、蒸し暑い日が続いていた。







ジワジワと木に止まったセミが鳴く。
















「暑ィ…」





上着を脱ぎ、シャツ一枚になる土方。




ちらりと横を見ると、いつもと変わらず涼しい顔で書類に目を通す梨乃。







「お前ェはなんだか涼しそうだな」



『涼しくはないけど、暑くもない。あたし低体温だから』






書類から目を離さないまま淡々と言う。



















































「トシィィィィ!!」




廊下から走る音が聞こえる。



その声の主は近藤で、土方の部屋の前に来たときにはパンツ一枚しか身に着けていなかった。








「暑い、暑すぎるぞォォォ!」



「だからってパンツ一枚でウロウロすんな!アンタ仮にも局長だろ!そんな姿でどうすんだよ!

それに男所帯ならまだしも梨乃もいんだから、ちったァ気ィ使え!」




『別にどうでも良いけど』






さらりと言ってのける梨乃は、近藤の姿にも動じず、目を通した書類を書類の山へと戻した。













「はァ…どうにかして涼しくならないものか…」




近藤はパンツに挟んでいたうちわを取り出しパタパタと仰いだ。






「夏だから仕方ねェだろ。それより仕事しろよ」





土方は冷ややかな目で近藤を見つめた。


















































































その日の夜―――





近藤を含む複数の隊士達は一室へと集まっていた。





部屋は真っ暗で懐中電灯が一人の隊士、稲山の顔をぼんやりと照らす。















稲山が口を開いた。















「あれは今日みたいに蚊がたくさん飛んでる暑い夜だったねェ…


俺友達と一緒に花火やってるうちにいつの間にか辺りは真っ暗になっちゃって」








稲山の話を皆恐る恐る聞いている。
















「そしたらさァ、もう真夜中だよ。そんな時間にさァ、寺子屋の窓から赤い着物の女がこっち見てんの」






近藤はゴクリと唾を飲んだ。






















「俺もうギョッとしちゃって、でも気になったんで恐る恐る聞いてみたの。何やってんの、こんな時間にって…



そしたらその女ニヤッと笑ってさ…」

















































































「マヨネーズが足りないんだけどォォ!」






「ぎゃふァァァァァァ!!」








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