アルファルド
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梨乃が屯所から出て行き1週間が経とうとしていた。
未だに消息が掴めないままだ。
土方は書類整理に追われており、部屋で一人黙々と整理を行う。
「トシ、ちょっと良いか」
「あァ」
近藤が一言声をかけ、戸を開ける。
「トシ、調子はどうだ?」
「あ?何だよ、いきなり。俺はいつもと変わらねェぜ?」
「…そこ、間違ってるぞ」
近藤が土方の手元の書類を指差す。
「…クソ、書き直しかよ」
頭をガシガシと掻く土方。
梨乃が出て行ってから、土方は気丈に振る舞ってはいるもののどこか上の空で、こういった小さなミスが増えていた。
「トシ、今日の夜なんだがな、とっつぁんと接待なんだ。トシも行こう」
「いや、俺は遠慮しとくよ。そういう場は苦手だ」
「お前梨乃さんがいなくなってからずっと部屋にこもりっぱなしだろ?ちょっと気分を変えよう」
近藤は土方の肩をポンと叩き部屋を後にした。
「…クソ、あの馬鹿どこ行っちまったんだ」
土方は間違った書類をグシャリと潰した。
そして夜、近藤と土方はとっつぁんこと松平片栗虎を屋敷まで迎えに行き、松平の行きつけの店、スナックすまいるへと向かった。