アルファルド
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土方は近藤に呼ばれ局長室へ来ていた。
「何だ?近藤さん」
「おう、トシ。梨乃さん、今総悟と見廻り中だろ?帰ったら渡しといてくれ」
近藤はそう言い太い紙の束を手渡した。
「…指名手配書か」
受け取った土方はパラパラと指名手配書の束を眺めた。
「彼女もだいぶ仕事に慣れてきたようだし、指名手配犯の顔も把握しておいてもらおうと思ってな。
直接渡せたら良かったんだが、俺はこれからとっつぁんのところに行かなきゃならん」
「分かった。渡しとくよ」
「おう、頼んだぞ」
土方は局長室を後にした。
ある一枚の手配書が棚の隙間に落ちていることも気付かずに―――
「おい、梨乃」
土方は見廻りから帰ってきて玄関でブーツを脱いでいる梨乃に声をかけた。
『何?』
「指名手配書だ。目を通しておけ」
渡された分厚い手配書の束を受け取る梨乃。
『…こんなに?』
梨乃はパラパラと手配書に目を通す。
「全員の名前と顔、覚えとけよ」
『・・・・』
あからさまに嫌な顔をする梨乃。
土方はそんな梨乃を横目にその場を後にした。