アルファルド
□07
1ページ/5ページ
梨乃が連れ去られた事件から3日後、退院した梨乃が真選組屯所へ戻ってきた。
まだ腫れの引かない左目には眼帯がされている。
局長室―――
「梨乃さん、退院おめでとう!」
近藤の言葉に梨乃は軽く会釈をする。
「傷が治るまでは警ら隊の仕事は良いから、トシの書類整理とか手伝ってあげて」
梨乃は視線を落としたまま無言でいる。
しばらくして、梨乃は口を開いた。
『…頼みがあるの』
次の日の早朝5時。
土方は朝稽古の為道場へ向かった。
道場にはすでに隊士たちが素振りなどをして汗を流していた。
その中に近藤と沖田と話す梨乃の姿があった。
「テメェ、こんな所で何やってんだ」
梨乃は土方の声に気付き振り向いた。
『何って、見て分からない?朝稽古しにきたの』
「ハァ!?」
「トシ、梨乃さんは今回の件があって自ら志願したんだよ」
『自分の身くらい、自分で守ろうと思って』
長い髪を高い位置で一つに結びながら梨乃は言った。
「剣術は俺が教えまさァ」
「トシは簡単な護身術や体術を教えてやってくれ。俺は隊士たちの稽古を見るから」
「あ、あぁ」
その後、土方と沖田が話し合った結果、1週間ごとに交互に教えることになった。
「やるからには弱音吐くなよ。女だからって容赦しねェ」
『誰に言ってんの?あんたこそ、女だからって手加減しないでよね』
その日から毎日、梨乃は怠けることなく真剣に土方や沖田から剣術や武術を学んだ。
そして相変わらず無愛想ではあるが、少しずつ隊士たちにも心を許せるようになってきたのだった。