現代

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「刑部ゥゥウウウ!!」




…やれやれ騒しきことよ



帰ってくるや、どかどかと階段を駆け上がり
三成はノックもせずに刑部の部屋へと入っ……乗り込んできた



珍しく夜出かけていた三成が帰ってきたのだ。



いつもならば、こんな行儀の悪い事も
遅い時間まで出歩いていることなど少ないのだが、
今日は太閤も半兵衛様もいない



二人はしばらく仕事で海外へ行っているからだ




「ぎょっ、ぎょぎょっ」

「落ち着かぬか、どこぞやの魚くんみたくなっておるぞ」

「ぎょうぶぅ……」




うぅっといつものように自分の身体に抱き着いてきた三成の頭を撫でながら

刑部はふぅ、と小さくため息をついた。




「三成、いい加減止めぬか」

「…?何をだ」



さも当然のように顔を埋めていた三成は、不思議そうに刑部を見上げた


たしかに昔から日常的にあったスキンシップなのだが、三成はもう高校生。



いくら血が繋がっていないとはいえ、
刑部にとってはいつまでも年の離れたかわいい妹なのだ



………それに最近の三成は急に女らしくなった




「……まぁ、よかろ」



ぽんぽんと背中を優しく叩くと、すっと三成はどいた



「毛利と会っていたのであろ?」

「それが、その……」




珍しく口ごもった。




「…長、曽我部とも……」

「そうか」




……長曽我部。
三成と同じくらい(いやそれ以上かもしれぬが)気の強い、
女王様気質の毛利と、その毛利にベタ惚れな
周りにアニキと慕われる(というかただのアホな)男を思い出して安堵した




長曽我部なれば三成に手を出すことなど、万に一つもないだろうと確信していたからだ。




「……あと…徳川…」


付け加えたように言った三成に、
刑部は思わず持っていた本をボトリ、と落とした



……徳川?
知らぬ名だ。


誰だ、と問おうとして、やめた



三成の頬が、ほんのりと桃色に染まっていたからだ



……やれ、これは半兵衛様に報告せねばならぬな



三成を溺愛してならない義母のヒステリックな悲鳴が脳裏に浮かんで、刑部は苦笑した







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