短編
□残った夜を
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部屋を出た刑部の後ろ姿がまだ目に残っている
このまま起き出して刑部の元に行くのもいいが、久方振りの休息に、身体はまだ浸っていたようだ
諦めて再び床に入るが、やはり何だか物足りない
秋の初めだというのに、虫の音一つ聞こえない
気味が悪い静寂ではあるが、何故か今の私の耳には優しい
うつらうつらと目を閉じれば、途切れながら見る夢は、
秀吉様や半兵衛様、ましてや刑部でさえなく、家康だ
「……チッ」
家康のせいで完全に目が覚めてしまった
おのれ家康、夢にまで私を悩ますか、と毒づきながら身体を起こすと
打ち掛けと愛刀だけを手に、三成は襖を引いた