短編

□月の光が墜ちる
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重い身体を起こすと、静かに眠りについている三成が微かに身を捩った

普段から眠りの浅い三成の貴重な睡眠時間、
そんな三成を起こさぬように、スルリと掛け布から抜け出すと

まだ夏も終わらぬというのに、ひやりと身を刺す外気に、刑部は思わず身を震わした


…寒さがいつも以上に凍みるのは、病がまた知らずの内に進行してしまっているからか


そんなことを考えれば、無意識に口元が皮肉げに歪んだ




さて、
まだ日が上がるには遠い刻ではあるが、やることは探さずとも山ほどある


鳥城の金吾に文(脅迫)を書かねばならぬし、
中国の毛利の様子も気になる

如何せん、わが同胞は目を離すと何をしでかすのやら憶測もできぬ



何しろ徳川側に降っていく軍が多いのだ、

しかし三成率いる西軍はというと、まだ戦力が足りない
このまま戦などしてみようが、不利なのは誰の目からしても明らかなのだ、無理もない




輿に乗ろうと、三成からすっと目を離すと、不意に腕を引かれた
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