短編

□薨
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秀吉は家康が反旗を翻したため滅び、
その右腕、半兵衛もついな病により倒れた。


豊臣の政権が崩れてからの三成はというと、
目も当てられぬ程酷い有様だった。



『家康様こそがこの世を平和に』

『豊臣が滅んだのも天命』


そのような類を吐けば
兵や民、ましてや女子供であろうとも三成は非情に刀を突き付けた



生き様なんてものじゃない
己から修羅の道を歩んでいるも同じ。


―――凶王三成、


誰がともなく彼をそう揶揄したが、あながち間違ってはいなかった。





「刑部!……刑部…!!」


ゆらり輝く星々を見ていると、三成がわれの名を呼んだ

………否、叫んだ。



その声に輿を浮かしてフワリと三成の元へ行くと、三成はまるで泣きそうな顔をしていた



「どこに行っていた刑部…」

「いやなに、ただの星観よ」

「…目を覚ましたらお前がいなかった!何故隣にいない!!」

「すまぬすまぬ、」


ずいぶんと強情なことをいう

物欲も色欲もないに等しい三成は純粋だ。


それ故、染まりやすいし壊れやすい

今では己の存在と太閤への崇拝だけが三成を動かしているといっても良いだろう


なんとも、悲しきことよ



「三成そう喚くな、われはちゃんとおる故。」

「本当だな……?」

「本当よ、ホントウ」

「……違える事は許さない」

「無論」



縋る三成が痛々しい







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