短編

□薨
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「刑部、…ぎょう……刑部っ!!」

「おぉ、まるで童よな」




ついに泣き出してしまった三成をあやすように頭を撫でた

よく三成に対して感情がない、冷徹だと言う人間もいるが違う。



三成は誰よりも人間らしくて、不器用なのだ


感情だってある、悲しければ泣くし、嬉しければ笑う

けれど今の三成はとても不安定で脆い



「さあわれも行く、また寝やれ三成 疲れておるであろ」

「……その必要はない」

「なればわれの為に、な」

「刑部の?」

「ぬしが倒れればわれは悲しい故」

「………わかった」



己のこの身も、いつ病に果てるかわからぬ

けれどこの先、長くないことはわかる


「…われも結局、俗人と変わらぬということか」


死が恐ろしい
まだ生の彼岸に留まっていたいのだ


「当たり前だ、刑部は人だ、違わないわけがないだろう」



肩に寄り掛かった三成の熱が温い


……いつまでこの熱を感じていられるだろうか



「私を呼べ……刑部」

「…三成、」

「半兵衛様の様に、倒れることは許さない」

「あいわかった」



何度も何度もこうして守れぬ約束を契る

この身を現世を留めておく為に




「………三成や」


ぬしが幸せになれるのならば、われの命など幾らでもくれてやろう


これ以上ぬしが傷つかぬように、
これ以上ぬしが悲しまぬように、




だから何度でも繰り返し
ぬしの名を呼ぼう


もし次の世で再びぬしと巡り逢えたなら
どうか血に塗れておらぬこの腕で
ぬしを抱きしめ最期まで寄り添っていよう






End


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