短編

□愛と哀
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「…ッ、うぅっ……」


涙が、止まらない

何とかとめようと息を呑むも、嗚咽がただひどくなるだけだ。


こんな惨めな姿、
誰にも見せられない

声だけは、と袖を噛んだ


織田が滅び、ようやく豊臣の天下が成せれようとしている中
崇拝してならない秀吉様と敬愛する半兵衛様

そしてずっと共に肩を並べていた刑部。




「友…だと……」


先程の言葉が耳から離れない

……好きだったのだ刑部のことが


しかし刑部は己をただの友だと言った

つまり、友情がそこにはあっても愛情はないと、


私…は………



普段泣くことが少ないからか
涙が堰を切ったように溢れ出す己の涙が、とても恨めしく思った。



とにかく早く自室戻ろうと、長い廊下を足早に曲がった時、




「っと、三成か…って泣いているのか!?」




今1番会いたくない男にぶつかった。






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