短編

□焦がれたモノ
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この薄暗い穴蔵に放り込まれてから
三成が自分の元を訪ねてきたのは、恐らく初めてだ。


「小生に何の用だ?」

「……私に気安く話しかけるな」



自分から会いに来たくせに相変わらず小生に対して冷たい


もう馴れたモンだったし久しく会ったからか、
憤りよりも懐かしさに似た何かが込み上げてきた



「近い内に家康を殺す」


ほぉ、権現をねぇ……


「そうかい」

「官兵衛、貴様も手を貸せ」

「……あ?」


何だい、用件はそんなことか?!


「拒否は認めない」



地べたに直接腰を下ろしている官兵衛を見下すように三成は言い放った。


…そういやぁ三成にはいつも見下されてばっかだ



「三成ぃ…お前さんに指図される謂れはないね」

「……何だと?」

「小生は小生の好きなようにやらせてもらうさ」



そう言うと、三成の眉間がぐっと険しくなった

逆鱗に触れたのだろう



「言っただろう…拒否は認めない!!」


声を荒げると三成はいきなり官兵衛の衿元を掴んだ


どこからそんな力が出るのか
細い身体の割に、意外と力があって不覚にも一緒怯んでしまった


怖いなぁ

己の長い前髪の間から、三成の顔を盗み見る


銀色の癖を知らない髪と長い睫毛
指すような鋭い瞳は真っすぐ官兵衛を捕らえていた



「そんなに小生の力が欲しいのか?」

「だからそうやって言っ……」



言い終わらぬ内に自分の首元を掴んでいた三成の手首を取ると、
力任せにぐいっと引き寄せた






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