空に浮かぶメロディー

□Four
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ピンポーン!



『あ、はい!!』



緊張しすぎて上擦ってしまった声。


これぐらいの返事をしたって玄関先の人には聞こえるわけがないのだ。
聞こえてしまってはピアノなんてうるさすぎて弾けない。



『……おはようございます』


真「あぁ、おはよう。よく眠れたか?」


『はい。……その、一十木さんは?』


真「あいつの部屋にも行ってきたが、一ノ瀬に寝てるからそのままにしてやれと言われてな」


『だったら大丈夫ですね』



ホッと胸を撫で降ろす。


昨日は公園で野宿することになってしまった。一十木さんはすごく申し訳なさそうだったが、そんなこと慣れたものだ。


若干眠りそうになっていると、遠くから小さく響くヘリコプターの音が聞こえた。
なんだと思いつつもうとうとしていたら段々と大きくなってくる風切り音とともに頭上から光を当てられた。


手で光を遮りながら上を見ると、ヘリコプターが私たちを捜していたと言わんばかりに飛んでいたのだ。


そこから垂れてきた梯子に驚いていると、知った声が響いてきた。



真「やっと見つけたぞ」


音「マサ〜!よかった〜」


『え?』


音「連絡しといたんだ。何処かわからなかったから時間かかったみたいだけど」



……ということで、なんとか日付がかわる前に家に帰れたのだ。
近所からのクレームが一切なかったことは触れないでおこう。


そして今日はその聖川さんとのデート。


楽譜で散乱した部屋を見られないように素早く外に出て鍵を閉めた。



真「………」


『?、どうしました?』



顔を少し赤く染め、モジモジしている聖川さんにそう問うと、彼はビクリと肩を揺らす。



真「いや、服が……」


『変ですか?』


真「そ、そうではない!」


『?』


真「制服とは違うから、違和感というか……昨日のように、その……」



ハッキリと言わない聖川さんに、さすがに不安になる。



真「その、綺麗だ!」


『え!?』



服を違うのに変えようと鍵を取り出した瞬間、腕を握られそう言い放たれた。


そのことに顔を真っ赤にするなだなんて無理な話だ。そう思って慌てたが、同じように赤くなっている聖川さんを見て少し落ち着く。



『私も、』


聖「え?」


『私も、聖川さんのこと綺麗だと思いますよ?』


聖「!?」



クスクスと笑うと、また顔を真っ赤にした聖川さんに気づかれないように歩き出した。


どこに向かって歩けばいいのかなんてわからなかったが、じきに聖川さんが先導してくれた。


頬は赤いままでそれを眺め続けていた。



そして着いた場所に驚くことになる。



『……すごい』


真「特に行く場所は決めてなかったのでな」



目の前に広がる賑やかな光景に思わず顔が綻ぶ。



『遊園地ですか……久しぶりです!』


真「女子はこのような場所を好むのであろう?」


『そうですかね?男の人でも大好きな人と一緒に来れば楽しいと思いますよ!』


真「……ならば、俺も今楽しいぞ」


『本当ですか!?だったら嬉しいです!』


真「(……天然なのか?)」



現在私たちがいるのはシャイニーさんが経営しているらしい遊園地。
お客さんは誰一人としていないのが気になる。


聖川さんはそんなことを気にせず私の目を不思議そうに見つめるものだから、おずおずとしながら疑問をぶつける。



『どうして他のお客さんがいないんですか?』


真「あぁ、今日は貸し切りだ。存分に楽しめ」


『か、貸し切りですか!?』



あまりの驚きように聖川さんが逆に驚く。



『……すみません、整理するために何か乗りましょう』


真「あ、あぁ……っ!」



聖川さんの手を掴むと、観覧車まで速歩きで向かった。








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