空に浮かぶメロディー
□Three
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「秋桜〜!!」
『一十木さん!』
遠くから手を振りながら走ってくる一十木さんに頬を綻ばせる。
今日は一十木さんとのお出かけ。昨日言ってたことを実行させているのだ。
「うわぁ……その私服、すっごく可愛いよ!」
『え!?』
出会い頭にいきなりそんなことを言われるだなんて思ってもみなかった。
「やっぱり女子の私服ってカワイイな〜。スカートってふわふわしてるし、秋桜にちょー似合ってる!」
『そんなことないですよ。スカートなんてこれから制服で嫌というほど着ますし』
「私服だからいいんだよ!」
あまりにストレートな言葉に顔を赤らめて一十木さんを見ると、私の顔をみた一十木さんも顔を赤らめる。
二人して顔を赤らめていることに、余計真っ赤になった。
傍から見ればまるで成り立てカップル。
一十木さんはかっこよくて、優しい。いくらアイドルは恋愛が御法度だからと言っても、今までに恋愛経験の一つや二つあると思っていた。
まあ、中学卒業してすぐなんてそんなものかな?でも最近の若者はませてるっていうし……
そこを考えると一番初めに出会ったときから変わらない初心さに、少し胸が高鳴った。
「ところで、何処にいきたい?俺、あんまり穴場とか知らないからさ、君のいきたいところにいこうよ」
『いきたいところですか……』
顎に手を触れて考えこむ私に一十木さんは微笑んだ。
『探検、しましょうか』
「探検?」
唐突な答えに驚いたのか、私のことを凝視する一十木さんに、少しムッとして言い返す。
『ダメですか?子供っぽいことをするのは』
「い、いや、ダメじゃないけど……」
『けど?』
急かすように迫ると、一十木さんは恥ずかしそうに頬を人差し指で掻きながら目を伏せる。
「……君が、あまりにも可愛いこというから…」
『可愛い……?』
「え?……うわぁあぁ!違う違う!その違って…って可愛くないわけじゃないんだけど、じゃなくて!!」
支離滅裂な一十木さん。最初よりも顔を赤らめている。
服装のことは可愛いと褒めれても、その人自身を可愛いというのは照れるだなんて。惚れない女なんていないだろう。
クスリと笑うと、一十木さんは不思議そうに私を見た。
「君は恥ずかしくないの?その……デートなのに」
『……デートっ!?』
なんで数秒溜めたんだ自分!!
「あ、あれっ?違った?」
『違っ……わないんですけど』
必死に胸の鼓動を押さえながら冷静に今の状況を整理する。改めて考えてみると確かにデート。
昨日皆に一緒に出かけて欲しいと頼んだということは、デートしてほしいと頼んだことになるのだ。
『……どうしよう!』
「何が?」
『我が儘で済まされる範囲のお願いじゃなかったです……』
「デートが?」
『……はい』
私の言葉に、一十木さんはさっきの私のようにムッとした。
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