黒田が入院して4日目の夜。久遠監督から病院に連絡があった。昼過ぎに掛かってきたらしいが、忙しかったため夜掛け直すよう伝えさせていた。 受話器を握って久遠監督と連絡を取る 『もしもし』 「久遠監督ですか。夜遅くにすみません。豪炎寺です。」 久遠監督はこんばんは、と言ってから、やや焦り気味に喋り出した。 『今日昼過ぎ、ソーンから手紙が来ました。』 「ソーン?」 『しろの足を撃った本人です。』 「どのような内容でしたか」 『しろを決勝戦に出したら頭を撃ち抜くと。』 「なん…しろをですか?」 取り乱さぬよう、平常心を装って会話を続ける。 『アイツらなら実行しかねません。しろの入院期間を一日、伸ばしていただけませんか。』 「分かりました。決勝戦の会場へ向かわせなければいいんですね。」 『はい。すみません。』 「警察には」 『既に情報を送っています。』 「わかりました。では。」 『はい。失礼します。』 受話器を置いて、自分の手が震えていることが分かる。 身近な、その上子供が撃たれている。それも自分の後輩の娘。思い入れがない筈がない。 11年間疎遠になっていたとしても、時折心配していたのには変わりない。 その子供が、今度は頭を撃ち抜かれ、殺されようとしている。 どうにかして、守りたい。あんな幼い子供を殺そうなんて馬鹿な事をする奴が憎い。 自分は、あの子をここから出さぬよう、見張ることしかできないようだ。 . |