「もうすごいですよせんぱーい!!尊敬します!!」 「あはは、可愛いなぁ!もう!」 隣で歩く立向居くんを抱き締めてからぽんぽんと頭を撫でる。 「最近黒田先輩、楽しそうにサッカーやってて俺安心しましたよ!」 「え?」 「だって、最初のうちなんかはずっと一人で練習してて、それに皆とあんまり関わろうとしなかったから…」 「それはきっと、皆のおかげですよ。私がこんなに皆に受け入れてもらえているのは、皆が受け入れてくれているからです。ありがとう。」 「せんぱぁぁああい!!」 「うん。」 今度は立向居くんが顔を真っ赤にしながらしがみついてきた。若干背の丈が一緒だったのが心に来た。 ついでに昼食も一緒に食べた。ほんとに可愛い。 午後の練習の休憩時間、秋ちゃんが走ってくるのを見て走って迎えに行く。 「秋ちゃん!どうしたんです?」 「しろちゃん、これ円堂くん宛に手紙なんだけど…」 「手紙…ほうほう。」 その手紙を円堂くんに渡すと、中からは得体のしれない、というか汚すぎる字で綴った紙が入っていた。 「…この字…!!」 本当に汚いとしか言いようがなかったが、他のメンバーには結構有名なようで。なんでも、円堂さんの特訓ノートとやらと同じ字らしい。 冬花の瞳孔が開く。 ああ、この字、見たことあると思ったら。冬花のお父さんの…そうだそうだ。それだ。 なぜ知っているかって、久遠さんが教えてくれたから。 円堂さんのお祖父さんはもう亡くなっているらしいが、この字は確かに彼のものじゃないか?と思う。本家の字なんて知らないけど。 だが目金さんがそれを“罠”だと否定。 それを立向居くんが否定。否定、否定 「…ですもん!ね、黒田先輩!」 「え、あ、え!?私ですか!?」 「黒田さんが知るはず無いでしょう!まだこのチームに来たばかりですし、円堂さんともあまり面識が無い!黒田さんを盾にしたって無駄ですよ!」 「なっ、なんですと目金!!私の情報処理能力あまりなめちゃいけませんよ!!」 「情報処理能力!?はっ、見てみたいものですね!」 「じゃあ私が飼ってるウイルス送り込みますよ!良いんですか!?対悪者用に作ったやつですから貴方眼鏡どころか失明しますよ!」 ぎゃあぎゃあ、わぁわぁ。 おい止めろ!落ち着けって!落ち着いてください!目金さん、そういうことであの字は円堂大介さんの字ですよ!違いますよ!ウイルスー!!落ち着けって!やめましょうよ黒田先輩!目金さんの分らず屋!ちゃんとノート見たことあるんですか!?ウイルスー!!と、とりあえず落ち着けって! 「ま!考えても仕方ないか!」 ピタリと乱闘が止まる。私は綱海さんに羽交い締めされていた。 円堂さんのプラス思考発言で、その場は収まった。 「ウイルス送りますよ。遠慮しないでくださいね」 「僕だってウイルスくらい作れますよ!一日あればあっという間です!」 「はん!あめーな!一時間だ!」 「くぅうううう!!」 「黒田ー、もう止めてやれよ、な?」 「だって……」 むっ、と目金さんを睨む。横から立向居くんにぷすりと頬に指を突き刺される。 「ふん。まぁこのくらいにしてあげますよ。」 「すみません先輩、巻き込んじゃって…」 「いいんですよ。それより早く練習しましょう!」 「そうだな。」 グラウンドに走っていこうとすると、冬花に呼び止められる。 二人に先に行ってて、と言って引き返すとスマホを手渡された。 「電話」 「誰から?」 「それが、しろを出せ、としか言わなくて…」 「…分かった。久遠さんや皆には内緒にしといて。」 冬花が力強く頷くと、私は耳に当てながらグラウンドを上がった。 「なんです。」 . |