数分すると、飛鷹が戻ってきた。それも少し笑っているように見えた。 「しろ、これから時間あるか?」 「ありますよ?雷雷軒にでも行くんですか?」 「いや。外へ出る。大丈夫か?」 「はい。特訓ですか?」 「行けばわかるさ」 飛鷹がそう言って笑うと、しろは笑顔にやられて顔を赤くした。 合宿所から出て、飛鷹としろは暗い道を並んで歩きだした。 しろは相変わらず上を向いて歩いている。 「転ぶぞ」 「大丈夫ですよ。」 そう言って上を見たまま軽々と縁石を超えたしろを見て、飛鷹は苦笑いした。 (猫みたいだな。) 行く道はだんだん暗さを増して、完全に真っ暗な道になる。 しろはそれでも上を見続けていた。 「そんなに星が好きか?」 「大好きですよ。」 「もし、しろに彼氏が出来たとすれば?」 「迷いますねー…彼氏ってきっと大切な人なんでしょうね…」 迷ってくれてよかった、と飛鷹は安堵の溜め息をついた。 そうだ、としろがやっと頭を下ろす。 「飛鷹さんだったら、星より好きになれるかもしれませんね。」 「……!」 しろは俯いていた顔を飛鷹に向けて、ニッと笑った。 「そうか」 「はい。」 (そうなれたらどんなに幸せなんだろうか。) . |