pure

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綱海が波に乗る姿を、ボーッと眺めるしろ。腕に括りつけられた携帯電話は、ずり落ちて肘にある。
しかし綺麗な海だ。

(どこかで見たことがある気がする…)

首を傾げて立ち上がり、ユニフォームのシャツを上で結んで海へ入る。

入って何をするわけでもなく、下半身が海水に浸かった状態で砂を弄ぶ。

(思い出せない)

そこへ、ボードへ乗って綱海が帰ってきた。

「よっ。どうだよ?」
「すごくいいです。海、気持ちいいですね…」
「…」

海に対して笑ったのか、それとも自分に対して笑ったのか分からないが、しろはあの笑顔を浮かべていた。
よいしょ、と綱海はしろの横へ座った。

なぁ、と声を掛け、腰を抱き寄せる。

「ちょっ!」
「ちょっとだけだよ。誰もいねぇしさ。な?」

綱海はしろの右肩に顎を乗せた。しろは顔を真っ赤にして綱海を睨んだ。だが綱海はしろをじーっと見つめていたので、はぁ、と溜め息をついた。

「今日、だけですよ……」
「よっしゃ!しろ〜」

綱海の甘え方がツボったのか、それとも昔を思い出すようにゆっくりしていたかったのかはわからないが、しろは綱海に気を許した。


「ねぇ綱海さん」
「なんだ」
「お父さんもお母さんも、きっと思い出せますよね」

そう言ってしろは、綱海の肩に自分の頭を乗せた。

「ああ。好きなんだろ?覚えてなくても、」
「大好きですよ。覚えてなくても。」

綱海はしろの頭をぽんぽんと撫でた。


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