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電車の中は、夏休みがもらえない通勤客がほとんどだった。
そんなことも気にせず、しろと綱海は仲良くお喋りしていた。

「へー、飛鷹って意外といい奴なんだなー。」
「不動さんには触れないんですね」
「だってなんか近寄んなこのやろうオーラバンバン出しちゃってんじゃん。しかもノリわりーし。」
「そうでもありませんよー。」
「………」
「…?どうかしました?」
「今は俺と居るんだから、男の話すんな!」
「えー、なんですかそれ。」
「いいから!じゃあ俺がエイリア戦の時活躍した昔話をしてやる!」

そんな二人を微笑ましく眺める通勤客。二人とも日本代表のジャージを着ているので日本代表のファンなんだろうか、と思っていた。

「お兄ちゃんたち、サッカー好きなの?」

と綱海と同じピンクの髪の小さい子供がいつの間にか綱海の横に立っていた。
二人はハッとしてその男の子を前のシートに座らせた。

「お前母ちゃんとかいねぇの?」
「ねーねーお姉ちゃん、サッカー好きなの?」
「好きだよ。どうして?」
「テレビで、お姉ちゃん達が着てるのと同じやつ着てる人がいたのー!」

二人は顔を見合わせて笑った。

「俺達はな、日本代表なんだぜ」
「お兄ちゃんはレギュラーメンバーなんだよ!すごいよねー」

すごいすごーい、と男の子は拍手する。それを見てしろは、秋に見せた時と同じ笑顔を向けていた。

「お兄ちゃん達、デート?」
「まぁな!な、しろちゃん」
「な"っ…!!!」

しろは赤面して綱海から顔を背けた。
男の子と綱海はそんなしろをからかいまくった。

「お姉ちゃん照れてるーカワイー」
「ほんとだー、しろちゃん顔真っ赤だーカワイー」
「うるさいっ、電車の中では静かにしてなさい!」
「あははー怒ったー!」
「怒ったー!でもカワイー」
「綱海さん!」

すでに笑ってそれを見ている人が何人もいた。
そこへ、男の子の保護者が来た。

「すみません、うちの子が…」
「いいんですよ!楽しかったですし!な!しろちゃん」
「しろちゃんって言わないでください。私は終始恥ずかしかったですよ」

そう言うと男の子の母親はクスリと笑った。

「お兄ちゃん達と遊んでもらったんだね、蘭丸、ありがとうは?」
「ありがとう、お兄ちゃん、お姉ちゃん!」
「ああ!母ちゃんとはぐれるんじゃないぞ!」
「うん!ばいばい!」

親子がその場を去ると、しろはハァー、と溜め息をついた。

「もう、ちっちゃい子に悪影響及ぼさないでください。」
「いいじゃねぇか。黒田もいい顔してたし。」
「それは…まぁ…」
「子供好きだろ」
「好きですよ。ええ。大好きです。」
「だよなー。うーん、なんか共通点でもあんのかな…?」
「何がです?」
「んー、さっきのいい顔さ、秋と居る時の顔と一緒だったんだよ。そんで、秋と子供に何か共通点でもあんのかなーって。」
「んー。可愛い?じゃないですか?」
「あー。あるかもな。」

すると何を思ったか綱海はしろの腕に絡みついて「しろっ」と可愛らしく甘えてきた。

「なっ、なんすかいきなり!!!」
「あれ、おかしいな。今の可愛くね?」
「可愛くありませんよ、何してるんですかまったく…」

と顔を真っ赤にして怒るしろ。

「じゃあなんだろう。」
「いいですよ探らなくて。きっといつか綱海さんにも笑ってみせますから。」
「……ばか」
「え」


その顔なんだよ、と綱海も真っ赤になった。




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