pure

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今日は森へは行かない。なぜかって工事が終わって壁が直ったからだ。
昨日はいろいろあって豪炎寺さんを直視できない。自分は口が固い人間だと思っていても、顔に出てしまうらしいからここで特訓やってて正解かもしれない。

朝の弁当を食べ終え、練習を始めたところで久遠さんに呼ばれた。

「はい?」
「一発、私にシュートを打ってみろ。」
「…え?」

意味が分からなかった。なんで久遠さんにシュートを打たねばならんのだ。失敗すればその左側の毛がちぎれるぞ。

「なんで…」
「テストだ。」
「え?」
「いいからさっさと打て。」

そう言って久遠さんは真新しいコンクリートの壁の前に立った。手はポケットに突っ込まれているし、止める素振りは見せない。
まさかとは思うが、突然変な性癖に目覚めたんじゃないだろうか…

「余計なことは考えるな」
「バレましたか。テストですよね、テスト」

そう言って思い切り普通のシュートを、力をセーブして打つ。剛速球は久遠さんの顔面めがけて走ってゆく。
まずい、と体中から変な汗が一瞬にして湧き出る。が、

久遠さんはそれを顔を傾けてかわした。
見切られているのか。やっぱりこの人には敵わない。

私の放ったシュートは、コンクリートの壁を抉り、程よい大きさのクレーターを造り上げて地面に落ちた。
私はシュートを打ったポーズのまま苦笑いで固まる。

「ふむ……」
「だ、ダメですか…」
「いや。このくらいで十分だろう。今のところは。これからもセーブの練習を続けろ。」
「はい」
「全力でプレーする時も来るだろう。その時のためにいつもの練習もしておけ」
「全力で、ですか?」
「ああ。本当の自分を忘れるな。」

久遠さんはそう言ってどこかへ行ってしまった。

「本当の自分か。」

何が本当で何が嘘かも分からない、曖昧な記憶の中で生活している。もう本当の私なんてどこかに埋もれて居なくなっているんじゃないかな…。それはやだな。

ボールをぽん、と足で拾い上げてキャッチすると、円堂さんが校舎裏に顔を出した。


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