pure

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ふわぁ、と女らしからぬ大きな欠伸をして涙目になる。
昨日はいろいろ考えすぎて眠れなかった。練習にも身が入らない。
どうしよ、とその場に座ってボールとじゃれていると、頭に水がかかった。

「ひぎっ!!」
「なーにボーッとしてんだよ」

顔を真上に向けると、ドリンクを入れる容器を逆さにして持っている不動さん。水責めの刑ですか?

「…ああ、昨日は眠れなくって、寝不足なんですよふわぁ〜…」

そう言ってボーッとしたまま立ち上がってフラフラする。だが風を切る音がして一気に目が覚めた。

「っ!!」

後ろから飛んできた剛速球。私はバク転をして足でボールをはさみ、そのまま地面に叩きつけた。案の定グラウンドがえぐれる。

「目、覚めたか?」
「おはようございます不動さん。手荒ですね」
「謝る気はねぇぞ。」
「結構です。」

さっき頭からかけられた水が、ユニフォームの中へ入って背中を伝った。

「――――ッ!!!」
「あ?」

私は一気に擽ったくなってダッシュでグラウンドを出てタオルで体を拭った。

「あー気持ち悪かった。」

ついでに汗を流そうと頭から水を被ってタオルで拭きながらグラウンドへ降りた。

「なんでわざわざ自分から濡れに行ったんだよ。」
「ついでです。」

そう言ってタオルを土手に置いて相棒を持ってリフティングの練習に励む。ハゲ、む。

まぁ普通のリフティングじゃ何も身につかないので変わり種を延々と続ける。
すると視線を感じてリフティングしながらそっちを見ると、立向居くんが目を輝かせながら見ていた。

フィニッシュを決めて立向居くんを見ると、遠くから拍手を送ってくれた。ありがとう。

円堂くーん、と木野さんの声がした。響木さんから連絡らしい。
ちょっと気になりながらも練習した。



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