次の試合まで練習練習また練習。一に練習二に練習。三四に練習五に練習。 「ったく、もうへとへとですよ…ん?」 家に戻ってバイトの準備をしようとしたとたん、着信音が道路に響く。誰だろう、と通話ボタンを押して出てみる。 「もしもし」 『しろ、今から来れるか』 「バイトですー。」 『それなら坂元さんに話を付けていた。今からこっちへ来てくれ』 「わ!た!し!の!バ!イ!ト!代!」 『お前確か自転車壊れたんだろう。新しいのを買って置いてあるんだが、飛鷹にでも…』 「喜んで向かわせてもらいますよ!」 興奮気味に電話を切って、ジャージのまま雷雷軒へ走った。 1分位でたどり着くとそこには飛鷹さんが居て、いつものように練習していた。 「飛鷹さん」 「ああ、しろ。悪いな、俺のために…」 「練習ですか、大丈夫ですよ。」 「俺は店に戻る。頼んだぞ」 「はーい」 そして練習続行。 地面に描いたサッカーボールを蹴る。普通の人が見れば何やってんだ、程度だけど、私たちからすれば深刻な問題であり、それを改善する唯一の方法なのだった。 「もう少し足の内側を意識してください」 「ああ、」 「この三角形を意識して蹴ってみましょう」 つま先で蹴るっていう手段もあるが、基本から教える。 何度か物を蹴って破壊したことはあるけど、喧嘩の蹴りとサッカーの蹴りを、知らぬまに使い分けていたのでどうすればいいのか自分にも分からない。 「うーん、もう大丈夫でしょう。」 「え、ああ…はぁ、」 私は響木さんから、少しでも蹴りに変化があったらボールを蹴らせてやれと言われたので、ボールを地面に置いた 「蹴ってみましょうか。」 「いいのか?」 「許可はもらっていますし、今度の試合、飛鷹さんが必要になると思います。その脚が、役に立つんです。」 「俺の、脚が?」 「はい」 壁にチョークでボール大の大きさに円を書く。 「あの中心を狙ってください。」 「はい、あ、ああ。」 (敬語…響木さんとごっちゃなのかしら。まだ私十分若いけど。) 一発蹴ると、だいぶ的を外れていた。 「続けてください」 「ああ。」 私は飛鷹さんを見ながら、スマホのメールを眺めた。 To:唐須 件名: 本文:きっちり約束守らないと、飛鷹さんもその連れも、無事じゃ済まさない。もちろんしろの身も、日本代表も (一体この愚か者に何が出来るんだろう。) . |