翌日、私が寝ているところに冬花が起しに来た。 「しろー…きゃぁっ!!しろ!?しろ!」 あんまり夜ふかししてたもんだから、爆睡中の私を、意識不明の重体だと捉えてしまった冬花は、私を揺すっていた。 「ふゆっぺ!?どうした!」 「守くん、しろが起きないの!」 「嘘だろ…!?おい黒田!」 冬花とバトンタッチした円堂さんが私を抱き起こして呼びかける。うっすらと円堂さんが見えてくる。 「円堂…さん?」 「大丈夫か?」 「え…えっ!!」 抱き起こされていると分かって一気に目が覚め、円堂さんから飛び退いて謝った。 「ごめんなさい!え、失礼しました!!」 「あ、おい黒田!!」 走って洗面所へ向かう。大抵私は食前に歯を磨くことが多い。ついでに飛鷹さんのジャージを回収して後で渡そう。 「あーびっくりした。」 「何がだ?」 「えっ」 目の前には既に口に歯ブラシを突っ込んで、鏡越しに目があった飛鷹さん。ジャージの上は私に貸してしまったので白いTシャツだけだった。 なぜか不機嫌そうに私に振り返る飛鷹さん 「なんで俺の貸したジャージを着てないんだ?」 「そのことなんですけど、昨日また汚しちゃって洗濯機にかけてたんです。それを取りに来ようと思って…」 「そうか。寒くはないか?」 「大丈夫です!」 「ならいいか。」 洗濯機を開いて飛鷹さんのジャージを取り出した。 「どうぞ」 「しろのジャージはどうした?」 「冬花が持ってます。」 「じゃあ着てろ。俺はどうせこのあとユニフォームに着替えるからな。」 「悪いですよ」 と、ジャージを突き出すと、それを奪われて羽織らされた。「いいから着とけ」と歯ブラシをくわえたまま言われ、そのジャージに腕を通してチャックを閉めた。 「ありがとうございます…」 「……。」 「あ、」 飛鷹さんは私に向かい合い、上まで上げたチャックを少し下に下ろした。 「そっちの方がいい。」 「そうですか?じゃあそうします」 若干二人とも顔が赤い。何してんだろう私たち… 歯を磨くことを思い出して、私も歯ブラシに歯磨き粉を付けて口に突っ込んだ。 しゃこしゃこと歯を磨く音が洗面所に響く。 笑顔でいるのもなんだか気が引けたので、二人とも無表情で歯を磨いていた。 洗面所の外では… 「な、なんか入りたくないでやんす…」 「俺もっす…なんであの組み合わせなんすか…」 「黒田さんも飛鷹さんもなんだか同じような怖さだよね…」 「とりあえず引き上げるでやんす、壁山、立向居…」 「うん」 「そうっすね」 一年生を怖がらせてしまっていたらしい。 . |